歯性上顎洞炎に最も関連性の高い根は?!
上顎洞と上顎臼歯根尖との距離
・上顎洞底に近い根
上顎7の近心頬側根(平均0.83ミリ)
上顎6の口蓋根(平均1.56ミリ)
上顎骨頬側壁に近い根
上顎4の近心頬側根(平均1.63ミリ)
上顎6の遠心頬側根(平均1.72ミリ)
(参考文献)
Eberhardt JA, Torabinejad M, Christiansen EL. A computed tomographic study of the distances between the maxillary sinus floor and the apices of the maxillary posterior teeth. Oral Surg Oral Med Oral Pathol 1992; 73(3) : 345-346.
・上顎洞炎症例の平均粘膜肥厚は7.4ミリであった。
上顎第一大臼歯と第二大臼歯は、小臼歯の11倍の確率で上顎洞炎との関与を認めたが、2本の大臼歯の上顎洞炎への関連性は同確率であった。
また、歯性上顎洞炎に最も関連性の高い根は上顎第一大臼歯の口蓋根であり、続いて第二大臼歯の近心頬側根であった。
(参考文献)
Rigolone M, Pasqualini D, Bianchi L, Berutti E, Bianchi SD. Vestibular surgical access to the palatine root of ruperior first molar: "low-dose cone-beam"CT analysis of the pathway and its anatomic variations. J Endod 2003; 29(11): 773-775.
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上顎骨頬側壁に近い根は、何かしらの問題が生じた際には、頬側歯槽骨を破壊してフィステルが現れる可能性が高いということになります。
また、頬側骨から根尖までの距離が小さいので、比較的無症状にフィステルが生じるかもしれません。
上顎第一大臼歯の口蓋根と第二大臼歯の近心頬側根は、頬側の歯槽骨まで距離がある一方で、上顎洞までの距離がないために、歯性上顎洞炎を惹起させやすいと考えることができます。
さらに、上顎第一大臼歯の口蓋根は、頬側の根よりも根尖孔の大きさが大きいために、バクテリアが容易に根尖孔外に出ることが可能となります。
上顎第一大臼歯の口蓋根の根管治療の際には、クラウンダウン法で、上部のバクテリアの多く存在する部位を先に除去する一方で、これ以上根尖孔の大きさを広げないように、ステップバック法も併用していくとよいと考えられます。
しかしながら、このように丁寧な根管治療を行っていても、インプラント治療が必要となるケースはあります。
上顎第一大臼歯の口蓋根からの根尖病変は、容易に歯槽骨を破壊し、その骨量を減らします。
そのため、上顎大臼歯部へのインプラントは、骨増生なしでインプラントを埋入可能なケースはそれほど多くはないというのが現実です。
条件が悪いケースでは、インプラントが上顎洞に迷入しないように、骨増生だけを先に行い、数か月後に2回目の骨増生とインプラント埋入を行うとよいでしょう。