根尖孔の拡大は歯根破折の発生を高めるのか?
・根尖孔の拡大は歯根破折の発生を高めるのか?
抜去歯を用いて破折抵抗性を調べた論文
ヒト抜去小臼歯(単根)を用い、作業長を根尖孔よりマイナス1ミリ(マイナスミリ群)、あるいは根尖孔まで(0ミリ群)として、NiTiファイル(K3, SybronEndo ; #25, 0.08 テーパー)で根管形成した。
試料をそれぞれさらに2群に分け、一方は#45, 0.02テーパーでの根管形成を追加した。
未処置根管のコントロール群を除くすべての試料をcontinuous wave of condensation法で根管充填した。
圧縮荷重試験を行い、破折時の荷重を調べた結果を示す。
根管充填前の荷重値は、すべての群でコントロール群より有意に小さい値であり(P<0.05)、作業長によらず#45, 0.02テーパー<#25, 0.08テーパー(P<0.05)、また形成サイズによらず0ミリ群<マイナス1ミリ群であった(P<0.05)。
一方、根管充填後の荷重値は、すべての群で根管充填前より有意に大きい値であった(P<0.05)。
大きい根尖孔の拡大は破折抵抗性を低くできるが、根管充填は破折抵抗性を回復することが示唆された。
(参考文献)
Prado M, et al. Resistance to vertical root fracture of root filled teeth using different conceptual approaches to canal preparation. Int Endod J. 2016; 49(9) : 898-904.
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圧縮荷重試験では、破折時の荷重の大きさが大きいほど丈夫であり、小さいほど丈夫ではないということになります。
この論文の結果では、『作業長によらず#45, 0.02テーパー<#25, 0.08テーパー(P<0.05)、また形成サイズによらず0ミリ群<マイナス1ミリ群であった(P<0.05)。』とあります。
ということは、作業長を根尖孔よりも1ミリアンダーにし、根尖孔はなるべく過剰に切削せずに、テーパーは大きめに付与するのが歯根破折を防止する根管形成方法であるということになります。
ただ、根尖が最初からラッパ状に開いているケースや、根尖が汚染されているケースでは根尖孔を拡大しないわけにはいきません。
そのため、やむなく根尖孔を拡大しなければいけなくなったケースでは歯根破折リスクをあらかじめ患者さんに伝えておく必要があるかもしれません。