インプラントとブリッジの最近のブログ記事

歯-インプラント支持補綴装置の生存率がインプラントーインプラントと比較して10%ほど低かった。

・インプラント-歯の連結固定性補綴装置の5年後の生存率予測は95.5%で、歯支持固定装置(ブリッジ):93.8%、インプラント支持補綴装置:95.2%、インプラント支持単独冠:94.5%とそれぞれより高い生存率を誇る。
しかし、10年後の生存率予測をみると、インプラント-歯の連結による固定性補綴装置では77.8%、歯支持固定装置(ブリッジ):89.2%、インプラント支持補綴装置(ブリッジ): 86.7%、インプラント支持単独冠:89.4%と歯-インプラント支持補綴装置の生存率がインプラントーインプラントと比較して10%ほど低かった。
(参考文献)
Pjetursson B, Bragger U, Lang NP, Zwahlen M. Clin Oral Implants Res 2007; 18 Suppl 3:97-113. Comparison of survival and complication rates of tooth-supported fixed dental prostheses(FDPs) and implant-supported FDPs and single crowns.
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当院でも天然歯とインプラントを補綴的に連結したケースはありますが、今のところトラブルはありません。
同じく天然歯とインプラントの連結であっても、場合分けを多く用意して、エビデンスを蓄積すると特定のケースでトラブルが多いというような結論が出てくる可能性があります。
例えば、上顎vs下顎、前歯部vs臼歯部、骨質1・2vs骨質3・4、アンチゴニアルノッチの有無などにおいて有意差がみられるのかどうかに興味があります。

2021年8月 5日

hori (08:22)

カテゴリ:インプラントとブリッジ

トラブルが増大するカンチレバーの長さとは?

・総じて、カンチレバーの長さと、インプラントの喪失、補綴装置の技術的合併症、辺縁骨の吸収量とは正の相関があり、トラブルを経験しているカンチレバーブリッジのカンチレバーの長さはおおよそ8ミリを超えていると報告されている。
一方でトラブルのないものの平均は8ミリ未満である。また、カンチレバーブリッジの支台であるシングルインプラントと、カンチレバーのないシングルインプラントの間では、辺縁骨レベルの平均変化量に差はないとされており、シングルインプラントの上部構造にカンチレバーを付与することは一概に否定できないようである。
なお、カンチレバーブリッジに付与すべき適切な咬合様式に関しては、現在のところ不明とされている。
(参考文献)
Kim P, Ivanovski S, Latcham N, Matteos N. The impact of cantilevers on biological and technical success outcomes of implant-supported fixed partial dentures. A retrospective cohort study. Clin Oral Implants Res 2014 ; 25(2) : 175-184.
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implant-supported fixed partial denturesにおけるカンチレバーの長さということになるので、いわゆるオールオン4の遠心カンチレバーの長さに関する研究報告でした。
インプラントブリッジでは基本的に遠心カンチレバーは当院では行いませんが、近心カンチレバーであればある程度の長さがあっても、咬み合わせの付与の仕方によっては十分に長期に安定する設計であると考えています。
ただし、カンチレバーよりも前方に存在する歯牙やインプラントが喪失する事態になれば、状況は大きく変化することになるので、定期的な歯科医師によるチェックは必須になるものと考えられます。

2020年11月 5日

hori (08:44)

カテゴリ:インプラントとブリッジ

主機能部位という側面でも義歯よりインプラントに軍配が!

・我々は、同等の臼歯部咬合支持の喪失を示す患者に対して、局部床義歯かインプラントで補綴処置した場合の主機能部位について分析を行った。
その結果、インプラントにおいては、92.3%の患者で主機能部位が大臼歯部に存在し、ほぼ天然歯の場合と同等の結果であったが、局部床義歯において70.8%にとどまった。
このように補綴装置の違いによって主機能部位が異なることが判明し、補綴装置のレジリティが関与している可能性が示唆された。
(参考文献)
山下秀一郎:21世紀の戦略的補綴 パーシャルデンチャーを科学する. The Quintessennce,24 (4) : 79-88,2005.
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保険診療ではアンテの法則に則ってブリッジの設計が決定されています。
また一般に歯科では、ブリッジが可能であればブリッジによる治療を行いますが、不可能であれば義歯による治療を行います。
具体的な例を挙げれば、大臼歯部では2本喪失しただけで、義歯使用を余儀なくなれている患者さんがいる一方で、前歯部では4本喪失してもいまだブリッジの治療を受けることが可能です。
そのような意味では、義歯を使用している患者さんは、前歯部より大臼歯部を喪失したことによって、義歯を使用している方が多いものと推測されます。
一方、今回の報告により、インプラントにおいては、92.3%の患者で主機能部位が大臼歯部に存在し、ほぼ天然歯の場合と同等の結果であったが、局部床義歯において70.8%にとどまったという結果が得られました。
これを受けて、大臼歯部の欠損に対して、義歯を使用している患者さんが多いという前提で考えるのであれば、仮に大臼歯部を義歯で咬合させる状態を歯科医師が提供したとしても、患者さんはそれよりも前方の天然歯部分で咬合しているケースがある一定数存在するといえるということになります。
すなわち、義歯は使用していても、咬んでいる部分は自分の歯の部分であるということになります。
また義歯を入れていても、入れていなくても、咬む部分は結局自分の歯であるならば、義歯自体使用することをやめてしまう患者さんもいるかもしれません。
そして今回のデータは、大学病院の歯科医師が理想的な義歯を製作した結果をベースにした報告と考えられるので、一般の義歯患者さんのデータはインプラントの92.3%という数字はもちろん、70.8%という今回の局部床義歯の数字からも大きく低下した数字であることが予想されます。
この数字の差が義歯よりもインプラント方が良く噛めることと関連しているように考察されます。

2019年9月25日

hori (08:10)

カテゴリ:インプラントとブリッジ

現在歯数とアイヒナー指数が咀嚼に与える影響

・現在歯数とアイヒナー指数が咀嚼に与える影響
現在歯数でみると、咀嚼できる割合が有意に増加するのは20本以上の集団であり、そのオッズ比は4.3倍でした。
これに対して、アイヒナー指数はグループCからAに進むにつれオッズ比は有意に上昇し、欠損歯のないA1では無歯顎に対して12.7倍も高かったのです。
この事実は、現在歯数よりも咬合支持域の状態の方が、より鋭敏な咀嚼能力の指標である可能性を示唆しています。
(参考文献)
小林修平編, 花田信弘ほか:高齢者の健康調査における全身状態の評価と口腔健康状態との関連 総括報告, -8020者のデータバンクの構築について-. 口腔保険協会, 東京, 2000.
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80歳で20本以上の歯のある人の数は、増加傾向にあると聞きます。
一方、現在歯数とアイヒナー指数が咀嚼能力に与える影響についての研究報告では、咬合支持が2つ以上あるアイヒナー分類B-2以上で有意差をもって咀嚼能力が高いという結果でした。
また、現在歯数が20本あっても、咬合支持域ゼロ(前歯の咬合接触のみ)のB-4の咬合接触状態はありますし、いわゆる"すれ違い咬合"の状態や片側無歯顎の状態は、上下無歯顎の状態よりも咀嚼能力が低いというデータが出ています。
そのため、現在歯数での評価よりも、アイヒナー指数の方が咀嚼能力を図る上で的確であると考えられます。
さらに、これは天然歯でのデータですが、同じインプラント治療でも、咬合支持数が増加する方向でインプラントを用いなくてはならないと考えております。

2019年7月25日

hori (08:59)

カテゴリ:インプラントとブリッジ

直接支台歯とインプラントに加わる荷重の垂直・側方成分

・直接支台歯とインプラントに加わる荷重の垂直・側方成分
               直接支台歯に加わる荷重 インプラントに加わる荷重
               側方成分  垂直成分   側方成分  垂直成分 
従来のPD          6.6±0.3   11.1±0.1           
インプラントPD 近心Imp  1.6±0.1    1.3±0.1  14.3±1.2  44.0±0.3
         遠心Imp  6.4±0.1   23.1±0.7  5.4±0.2   51.7±0.4
遠心インプラント支台時に直接支台歯に加わる荷重は、従来の部分床義歯に比較して増加した。
この結果は、インプラントの設置は直接支台歯の負担を軽減するとされてきたこれまでの知見と相反するものである。
遠心インプラント支台の存在は、義歯床下粘膜荷重を軽減させることは明らかであるが、軽減された分の荷重はインプラントと支台歯にて負担することになる。
すなわち、粘膜が主体であった遊離端欠損部の過重負担様式から、ロングスパンの固定性ブリッジの支持様式に近似する様式に移行したものと考えられる。
この場合、支台歯の過重負担の増加は合理的ともいえる。
「遊離端欠損形態の中間欠損化(ケネディ分類?級化)」はインプラントパーシャルデンチャーの力学的利点とされているが、場合によっては直接支台歯への負担増加になりうるため、この点については十分な配慮が必要である。
さらに、インプラント支台による義歯床下粘膜荷重の減少効果は明らかにされたが、遠心インプラント支台時には少なからず粘膜下荷重が測定された(7.4N)。
これは義歯床部のたわみ、あるいは今回使用したボールアタッチメントの可動性が影響したと考えられた。
これから、インプラントパーシャルデンチャーにおいても、アタッチメントの選択とともに、機能時の義歯の動揺・歪みによる粘膜荷重を考慮した調整の必要性が示唆される。
(参考文献)
Matsudate Y, et al. Load distribution on abutment tooth, implant and residual ridge with distal-extension implant-supported removable partial denture. J Prosthodont Res. 2016 ; ahead of print.
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567の遊離端欠損義歯で、5部の義歯床下にインプラントを設置した場合と、7部の義歯床下にインプラントを設置した場合とで、その上に部分床義歯を装着し、咬合力を変えたときに、力の分布が両者で異なっていたという研究報告です。
興味深いのは、7部の義歯床下にインプラントを設置した場合に、直接支台歯の負担が増大する点です。
これまでインプラントは直接支台歯の負担を軽減するとされてきましたが、7部のインプラントオーバーデンチャーでは、ロングスパンの固定性ブリッジの支持様式に移行するとのことです。

2017年3月15日

hori (16:15)

カテゴリ:インプラントとブリッジ

10年後のMB単冠では、歯髄生存率は85%前後、ブリッジは70%。

・香港で行われた後ろ向き研究
単冠の陶材焼付冠(MB)あるいはブリッジを装着された歯の根尖部の状態をデンタルX線写真で判定した。
単冠の陶材焼付冠では歯髄の生活性は高かったが、上顎前歯のブリッジでは高頻度で失活となった。
10年後のMB単冠では、歯髄生存率は85%前後、ブリッジは70%。
(参考文献)
Cheung GS, et al. Fate of vital pulps beneath a metal-ceramic crown or a bridge retainer. Int Endod J. 2005; 38(8) : 521-530.
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上顎前歯部への陶材焼付冠あるいはオールセラミックスは、お口の中でもよく見えるところであるために、患者さんの治療希望の多い部位でもあります。
神経を除去すると歯が弱くなるという歯科医師もいるようですが、実際は失活歯は生活歯よりも乾燥しているというデータや、力学的に脆弱であるというデータは誤りのようです。
歯髄生存率は、単冠で85%、ブリッジで70%、その差は15%。
提供する根管治療のクオリティにもよりますが、個人的には、被せてから歯髄壊死が生じるくらいならば、最初から根管治療・根管充填を行い、支台歯形成時の歯髄へのダメージがない状態で被せた方が得策と考えています。
もちろん、患者さんには何か問題が生じた際のリスクを説明したうえで、数ある治療法から選択していただくのが良いということは言うまでもありません。

2017年1月10日

hori (14:50)

カテゴリ:インプラントとブリッジ

コーヌスクローネは、維持歯7:人工歯7で安定する。

・コーヌスクローネが口腔内において不安定なる要素は、義歯床が動くことによるものがほぼすべてであり、最終的に安定が得られるかどうかは、この維持歯と義歯床(人工歯)の割合が一つの判断基準となる。
筆者らの経験では、50:50(維持歯7:人工歯7)である場合にはほぼ問題が起きにくく、ここから人工歯(義歯床)の割合が高くなればなるほど、コーヌスコローネ本体の安定性が低くなる傾向がある。
(補綴臨床 2015年5月号 )
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問題が生じにくいコーヌスクローネの要件としては、片顎で維持歯が7本以上あること、維持歯を線で結んだ際に再現される回転軸が複数存在し、対合関係や各維持歯の骨植状態が良好であることが分かりました。
これはすなわち、ブリッジができるレベルの維持歯数があり、その状態も比較的良好な場合にコーヌスクローネは安定するということになります。
私は、ブリッジができないところに、インプラントや義歯の設計を考えることが多いので、ブリッジが可能な段階で、義歯の一種であるコーヌスクローネを患者さんにお勧めすることはありません。
しかも、日本人にコーヌスクローネを計画する場合、神経を除去しなければ、維持歯の平行性がとれないことが多いのが現状です。
また、維持歯が、失活歯であるがゆえに、歯根破折を起こしたり、脱離した維持歯を再度接着した場合に完全に元の場所に戻すのは意外と困難であるという問題点もあります。
さらに、コーヌスクローネを製作できる技工士さんがそれほど多くはないという問題もあります。
おそらく義歯で最も長期に安定する可能性があるのは、コーヌスクローネなのですが、患者さんにお勧めしにくい様々な問題点もあるのもまた事実ということになるでしょう。
コーヌスクローネタイプのインプラントは同じように長期安定が見込める治療計画ですが、同じく治療費がブリッジタイプ(スクリューリテインやセメントリテイン)の場合より高額になるのがデメリットとなります。

2015年7月30日

hori (16:18)

カテゴリ:インプラントとブリッジ

インプラントとAnteの法則

2006年にスイスのチューリッヒで開催されたEuropean Association for Osseointegration において、Langは、「いまだにAnteの法則をおぼえている人は、それを忘れるべきであり、それを知らない人は幸運である」と発言している。
これはLangらのグループによる、骨支持量は減少しているが歯周組織は健康である支台歯を有した固定性ブリッジに関しての最長25年経過の579症例の術後の生存率(5年経過で96.4%、10年経過で92.9%)ならびに術後の問題事象に関するメタアナリシスからは、骨支持量が減少していない場合と比較しても遜色がないとした報告に基づいたものである。
同様にFayyadとAl-Rafeeは132症例156個の固定性ブリッジにおいて、Anteの法則に合致しなかったものが大学の症例で26.9%、臨床家の症例で50%あったが、問題を生じた56個のブリッジのうち明らかにオーバーロードによるものと考えられたものは2例であったとしている。
これに対して、短縮歯列を提唱したKayser,Leempoelらのグループは、固定性ブリッジ1674個の12年間の生存率とAnteの法則の間には有意の相関があったことを示している。
一方、この報告では通常のブリッジとカンチレバーブリッジとの間に有意差がなかったとしていることは興味深い。
これらの報告から、負荷の状況がどうであったかが確認できないが、ブリッジの生存率に対しては、支持の条件以上に、負荷や咬合の条件がより大きく影響する因子であることが推測される。
(その補綴に根拠はあるか より )
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歯科で、保険でブリッジの治療を受ける場合、このAnteの法則に則った設計のみが適応となります。
このAnteの法則は、欠損歯の支台歯の位置のみによって、ブリッジの設計の是非を決定するもので、歯槽骨に植わっている歯根の長さや歯周組織の状態等は反映されていません。
そのため、Anteの法則に則った設計以外でも、臨床上問題なく経過しているケースは少なからず存在するようです。
ただ、Anteの法則以外の設計で治療計画を立てる場合、その設計が強度的に問題ないかの明確な診断基準はおそらくまだないものと思われます。
また、治療終了時には問題なく経過していたのに、患者さんが高齢になり、メインテナンスに応じることができなくなったりした場合には、Anteの法則以外の設計はリスクが伴う場合もあるかと思います。
個人、個人の経験則と責任で、より良い歯科医療を患者さんに提供したいものです。
なお、インプラントブリッジに関しては、Anteの法則は天然歯ほど厳密に考える必要はないものと考えられます。

2015年2月20日

hori (16:36)

カテゴリ:インプラントとブリッジ

長いブリッジ治療よりも、インプラント治療

欠損部の長さに対する"たわみ"を1とすると、欠損部の長さが2倍になれば、その"たわみ"は8倍となり、欠損部の長さが3倍となれば、"たわみ"は27倍となる。

欠損部の垂直的な厚みに対する"たわみ"を1とすると、その厚みが半分になれば、"たわみ"は8倍となる。
すべてのブリッジは長短に関わらず、ある程度は曲がるものである。
ポンティックを経て支台歯に加わる咬合力は、単冠のそれと比較して、大きさも方向も異なる。
(参考文献)
SHILLINBURG HT, Fundamentals of Fixed Prothodontics. 2nd edition. Chicago : Quiniessense Publishing, 1978.
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このエビデンスは、長いブリッジが長期的に安定しない根拠となるでしょう。
また、ブリッジの垂直的な厚みが相対的に薄くなりやすいのが、虫歯で歯を失った際のブリッジです。
この場合、咬合面もフラットなものとなるため、歯根破折が発生しやすいと考えられます。
こうして考えると、Anteの法則に従っている補綴設計の中にも、長期に安定しないブリッジの設計は、行うべきではありません。
やはりこのようなケースほど、インプラント治療が第一選択となるのです。

2014年6月 1日

hori (08:50)

カテゴリ:インプラントとブリッジ

ブリッジは、単冠よりもその後神経を失う傾向がある。

・BergenholtzとNymanは、歯周病症例で歯周治療と補綴治療を完了した後に、単冠とブリッジの支台歯が失活してしまった比率を52名の患者について4年から13年の追跡調査を実施し、ブリッジの支台歯は、単冠の支台歯よりも失活しやすい(ブリッジで15%、単冠で3%が失活した)ことをつきとめ、その後の歯内療法の結果として根尖病巣と歯根破折による失敗が多くを占めるようになったことを報告している。
(参考文献)
Bergenholtz G,Nyman S. Endodontic comlications following periodontal and prosthetic treatment of patients with advanced periodontal disease. J Periodontol 1984; 55:63-68.
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通常の単冠と比較した場合、ブリッジ治療では、治療受けた歯の根の治療が、必要にことが多いというエビデンスです。
一度行った治療が長持ちするためにも、ブリッジではなく、インプラント治療の方が適当であるということになりますね。

2014年5月25日

hori (09:00)

カテゴリ:インプラントとブリッジ

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