・スクリュー固定は着脱時だけでなく装着後もインプラント-アバットメント境界部まで汚染されやすい。
またアクセスホールからマイクロギャップに向けて口腔内の汚れを吸い寄せてしまうかもしれない。
また、スクリュー固定は側方力によって容易にマイクロギャップでの疲弊が起こるため、コニカルアバットメントなどの選択も推奨される。
つまり、マイクロギャップが最低限に抑えられたしっかりとした連結部の固定に加えて、アクセスホールの強固な封鎖も求められる。
(クインテッセンス・デンタル・インプラントロジー 2019 vol.26 3 )
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現在インプラントの固定様式のブームは、スクリュー固定です。
セメント固定では、残留セメントがインプラント周囲炎を惹起する場合があるために、リスクであると考えられているからです。
エクスターナルインプラントをスクリュー固定し、アバットメントスクリューが度々緩むケースで、アクセスホールからの汚れの侵入があれば、マイクロギャップは確実な感染源になるものと考えられます。
2019年6月15日
hori (08:19)
カテゴリ:スクリューリテインとセメントリテイン
・スクリュー固定は、セメント固定に比べてアバットメントスクリューの緩みと上部構造セラミックスの破折が有意に高いことが報告され、その結果としてブラークの介在による歯肉の炎症と、辺縁骨吸収のリスクが高まることが示唆されている。
(参考文献)
Nissan J, Narobai D, Gross O,G helfan O, Chaushu G. Long-term output of cemented versus screw-retained implant-supported partial restorations. Int J Oral Maxillofac Implants 2011;26(5):1102-1107.
Ferreiroa A, Penarrocha-Diago M, Pradies G, Sola-Ruiz MF, Agustin-Panadero R. Cemented and screw-retained implant-supported single-tooth restorations in the molar mandibular region: A retrospective comparison study after an observation period of 1 to 4years. J Clin Exp Dent; 7(1):e 89-94.
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現在、インプラント固定様式はスクリュー固定がブームですが、スクリュー固定はアバットメントスクリューの緩みと上部セラミックスの破折がセメント固定よりも有意に高いという研究報告もあるようです。
スクリュー固定 VS セメント固定ではなく、何事も一長一短という感じがします。
2019年3月10日
hori (08:06)
カテゴリ:スクリューリテインとセメントリテイン
・セメント残留リスクがあるはずのセメント固定と、セメント残留がないスクリュー固定で、インプラント周囲炎の発症率には差がない。
セメント固定で残留セメントなし(56で43.4%)→健康70%
インプラント周囲疾患30%
セメント固定で残留セメントあり(73で56.6%)→健康15%
インプラント周囲疾患85%
残留セメントありで歯周病罹患歴なし34→健康11
インプラント周囲粘膜炎20
初期のインプラント周囲炎3
残留セメントありで歯周病罹患歴あり39→初期のインプラント周囲炎4
インプラント周囲炎35
(参考文献)
Linkevicius T, Puisys A, Vindasiute E, Linkeviciene L, Apse P, Does residual cement aroud implant-supported restorations cause periimplant disease? A retrospective case analysis. Clin Oral Implants Res 2013; 24(11):1179-1184.
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セメント固定で残留セメントがないのにインプラント周囲疾患になる患者さんと、セメント固定で残留セメントがあっても健康な患者さんが存在するために、セメント残留リスクがあるはずのセメント固定と、セメント残留がないスクリュー固定で、インプラント周囲炎の発症率には差がないという結果になったようです。
ただ、歯周病罹患歴がある患者さんに残留セメントのあるセメント固定をしてしまうと、かなりの確率でインプラント周囲炎になるので、侵襲性歯周炎の患者さんにインプラント治療を行う際には、より注意が必要となります。
2017年6月30日
hori (15:29)
カテゴリ:スクリューリテインとセメントリテイン
・スクリュー固定式インプラント上部構造アクセスホール封鎖に対するセラミックインレーの利用
診断用ワックスアップを行い、サージカルガイドを用いてインプラント埋入を行い、3か月の治癒期間を置き、オッセオインテグレーション獲得後、すべての患者にCAD/CAMチタンアバットメントに2ケイ酸リチウムガラスセラミッククラウンを接着性セメントを用いて合着したスクリュー固定式上部構造を装着した。
すべての上部構造を2つの群に振り分けた。
対照群ではコンポジットレジンを、実験群ではセラミックインレーを用いてアクセスホールを封鎖した。
装着された29個のセラミックインレーと29個のコンポジットレジン充填が解析に用いられた。
2年後のフォローアップ時の摩耗量はコンポジット充填では平均228.20±54.68μmであったのに対して、セラミックインレーグループでは65.20±7.24μmであった。
一元配置分散分析において垂直的な摩耗量には有意差があった。
(参考文献)
Urilization of Ceramic Inlays for Sealing Implant Prosthese Screw Access Holes : A CasControl Study. Int J Oral Maxillofac Implants 2016 ; 31(5) : 1142-1149.
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スクリューリテインの欠点には、アクセスホールをCRで封鎖するために、色調がマッチさせにくいことと、しっかりと咬ませたい部位が継時的に咬耗で咬まなくなってしまうことなどの問題点がありました。
今回の報告で、そのアクセスホールをセラミックインレーで封鎖するというアイデアを知ることができました。
また当然かもしれませんが、有意差をもってコンポジット充填よりもセラミックインレーの方が垂直的な摩耗量は少なかったようです。
全てのケースで対応できるわけではありませんが、ケースを選べば、これまでのスクリューリテインの欠点を補うことができる可能性が示唆されました。
2017年3月 5日
hori (15:11)
カテゴリ:スクリューリテインとセメントリテイン
・筆者は、インプラント補綴にレジンセメントを使用している。
金属と金属、あるいは金属とジルコニアという状態で、チタンのアバットメントに対して、ジルコニアクラウン、チタンのアバットメントに対してメタルボンドクラウンなど、この界面に対して接着材を使わないレジンセメントは、ただ強度があるだけの仮着と思っています。
ですから、力をかければ外れます。
天然歯の場合は接着機構は成り立ちますが、金属と金属では成り立たないと思います。
インプラントの場合、相手が天然歯ではなく、アバットメントなので、どんな接着材を使おうが結果は仮着なのではないでしょうか。
(デンタルダイヤモンド 2016年9月号)
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インプラントの固定様式の一つに、セメントリテインという方法があります。
これまで使用するセメントは仮着用セメントでしたが、今回の指摘のようにレジンセメントを使用してもあまり問題はないと考えられます。
またとくに前歯部でセメントリテインのインプラントが脱離し、それを放置した場合、その周囲の歯肉形態は刻一刻と変化していき、脱離した期間があまりに長期に亘ると、プロビジョナルに戻り、歯肉形態の付与から再度やり直さなくてはなりません。
このような手間のかかる作業が時に必要になる場合があることを考えると、特に前歯部のシングルのインプラントでは、レジンセメントは悪い方法ではないと考えられます。
そしてさらに、そもそもレジンセメントでインプラントの上部構造を固定しても、それは通常の天然歯の場合の接着機構とは異なるため、真の意味での接着ではありません。
セメントリテインで、何かトラブルが合ったら、上からホール形成をして、スクリューリテインに変更するだけのことです。
確かに面倒な作業ではあるけれど、大したトラブルではないと考えられます。
2016年11月 5日
hori (13:59)
カテゴリ:スクリューリテインとセメントリテイン
・連続するインプラントの間に天然歯様の乳頭組織を獲得するためには、インプラント間にプラットフォームより高い位置に硬組織を増大・維持しなければならない。
そのためには、垂直的なGBRやインプラント間距離を3ミリ以上保つことも重要であるが、隣接する歯根膜が存在しない多数歯欠損インプラント症例では、補綴コンポーネントのインプラントレベルからの着脱回数を減らすことも考慮するべきかもしれない。
なぜならば着脱による周囲組織侵襲により辺縁骨吸収を惹起させ、審美的には大きな影響を与える可能性があるからである。
前歯部多数歯欠損の審美インプラント症例では、その意味からも着脱回数が多くなるスクリュー固定タイプの上部構造は避けた方が賢明であろう。
もう一つの要因はインプラントによって支えられる上部構造のゆるみは単独歯よりも生じにくいと言えよう。
(参考文献)
Degidi M, Nardi D, Piattelli A. One abutment at one time: non-removal of an immediate abutment and its effect on bone hearing around subcrestal tapered implants. Clin Oral Implants Res. 2011; 22(11): 1303-1307.
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インプラント周囲炎が頻繁に話題に上るようになって久しいですが、インプラント周囲のメンテナンスとして、定期的に上部構造を取り外し清掃されている方もおられるかと思います。
汚れているよりは清潔な方が当然のことながら良いわけですが、上部構造の度重なる着脱により、インプラント周囲組織が侵襲を受け、骨レベルが低下するということが近年明らかになってきています。
特に前歯部インプラントではセメント固定で対応し、何かトラブルがあった場合には、上部構造に穴をあけ、そこからスクリュー固定として対処する方法が主流になる可能性があります。
仮着材を利用してのセメント固定でも、上部構造を外したいときには中々外れないことが少なくないからです。
2016年1月25日
hori (14:39)
カテゴリ:スクリューリテインとセメントリテイン
・スクリュー固定とインプラント周囲炎の関係性
材質がゴールドであれば、その撓みに術者が気が付くことができるが、チタンになると分からなくなる。
チタンは剛性が高く、不適合であっても撓まない。
そのため、不適合のままおよそ15度角で精度が良いと誤認し、そのままさらに強い推奨トルクで締結すると、応力は骨縁に残留し、これがインプラント周囲炎のトリガーになると考えられる。
今日、「バクテリアが主たる原因」との説が主流ですが、必ずしもそうではありません。
実際、単独修復に比較して、連結された修復物の方が骨吸収が認められる印象があるくらいだからです。
(クインテッセンス デンタル・インプラントロジー 2015年vol.22 5 )
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インプラントの上部構造には、主なものにスクリュー固定とセメント固定があります。
インプラントによる審美治療を追求しすぎたことが関係してか、セメント固定でのセメント取り残しによるインプラント周囲炎が問題になるようになりました。
(インプラント上部の被せ物の辺縁を歯肉縁下深い部位へ設定することで、セメントの除去が困難になりました。)
それならばと、セメントを使用しないスクリュー固定が注目されるようになりました。
しかしながら、セメントを使用しないセメント固定が増えても、期待したほどインプラント周囲炎の割合や頻度が減少したという報告は聞いたことがありません。
セメント固定とスクリュー固定という方法の違いはもちろんありますが、それと同じくらい結果に大きく影響を与えるのが、術者の違いです。
結局のところ、誰が施術するかによって、インプラントの"もち"は決定される部分が大きいということです。
また、今回の記事にもありますが、インプラントメーカーがコストダウンを目的にして、固定するスクリューをゴールドからチタンに変えてしまったことも、スクリュー固定であったも、インプラント周囲炎が減らない理由の一つになっているという指摘もあります。
そしてもう一つ、そもそも現在のスクリュー固定のブームが来る前は、セメント固定が一般的でした。
そのときには、スクリューホールの部分で、咬み合わせの調整がしにくいという理由で、セメント固定が一般的だったはずです。
それを考えると、このブームは終焉する可能性もあります。
しっかりと自分の考えを持ち、"流行"に流されないように仕事をしたいものです。
2015年10月30日
hori (10:21)
カテゴリ:スクリューリテインとセメントリテイン
・コーヌスクローネが口腔内において不安定なる要素は、義歯床が動くことによるものがほぼすべてであり、最終的に安定が得られるかどうかは、この維持歯と義歯床(人工歯)の割合が一つの判断基準となる。
筆者らの経験では、50:50(維持歯7:人工歯7)である場合にはほぼ問題が起きにくく、ここから人工歯(義歯床)の割合が高くなればなるほど、コーヌスコローネ本体の安定性が低くなる傾向がある。
(補綴臨床 2015年5月号 )
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問題が生じにくいコーヌスクローネの要件としては、片顎で維持歯が7本以上あること、維持歯を線で結んだ際に再現される回転軸が複数存在し、対合関係や各維持歯の骨植状態が良好であることが分かりました。
これはすなわち、ブリッジができるレベルの維持歯数があり、その状態も比較的良好な場合にコーヌスクローネは安定するということになります。
私は、ブリッジができないところに、インプラントや義歯の設計を考えることが多いので、ブリッジが可能な段階で、義歯の一種であるコーヌスクローネを患者さんにお勧めすることはありません。
しかも、日本人にコーヌスクローネを計画する場合、神経を除去しなければ、維持歯の平行性がとれないことが多いのが現状です。
また、維持歯が、失活歯であるがゆえに、歯根破折を起こしたり、脱離した維持歯を再度接着した場合に完全に元の場所に戻すのは意外と困難であるという問題点もあります。
さらに、コーヌスクローネを製作できる技工士さんがそれほど多くはないという問題もあります。
おそらく義歯で最も長期に安定する可能性があるのは、コーヌスクローネなのですが、患者さんにお勧めしにくい様々な問題点もあるのもまた事実ということになるでしょう。
コーヌスクローネタイプのインプラントは同じように長期安定が見込める治療計画ですが、同じく治療費がブリッジタイプ(スクリューリテインやセメントリテイン)の場合より高額になるのがデメリットとなります。
2015年7月30日
hori (16:18)
カテゴリ:スクリューリテインとセメントリテイン
Al-Omariらはインプラント上部構造におけるセラミック咬合面の破折抵抗の実験調査では、アクセスホールがないセラミック咬合面が、一番破折に対して抵抗があったと報告している。
これはセラミックが焼成後収縮していく過程で、アクセスホールがセラミック構造を不均一にすることが原因であるとしている。
(参考文献)
Al-Omari WM, Shadid R, Abu-Nabaa L, El Masoud B, Porcelain fracture resistance of screw-retained, cement-retained, and screw-cement-retained implant-supported metal ceramic posterior crowns. J Prosthodont 2010 ; 19: 263-73.
Zarone F, Sorrentino R, Traini T, Di lorio D, Caputi S. Fracture resistance of implant-supported screw-versus cement-retained porcelain fused to metal single crowns : SEM fractographic analysis. Dent Mater 2007 ; 23 : 296-301.
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スクリューリテインは、咬み合わせの面にアクセスホールがあり、通常そこにはプラスティックで蓋をします。
アクセスホール直上のプラスティックとその周囲のセラミックスとは、硬さが全く異なるので、プラスティック部分が選択的に咬耗します。
咬耗すると、アクセスホールの角張った部分のセラミックスが破折しやすくなるのです。
また、今回紹介した文献で、セラミックスの焼成後、アクセスホールがセラミックスを脆弱なものとすることも学びました。
スクリューリテインもセメントリテインも一長一短ですね。
2014年5月30日
hori (15:16)
カテゴリ:スクリューリテインとセメントリテイン