メンテナンスと根分岐部病変の予後
・定期的なメンテナンスを受けないと、根分岐部病変(以下、FI)はどうなる?
この研究は、ポメラニア健康調査(SHIP)の一環として行われ、ベースラインと11年後のフォローアップ時のデータが用いられました。
対照となった被験者は、西ポメラニアの北西部に在住する20-81歳の白人でした。
すべての被験者の片顎に、プロービングデプス(以下、PPD)および臨床的アタッチメントレベル(以下、CAL)の4点法による測定を含む検査が行われ、その中に上顎大臼歯(頬側部と近心部)と下顎大臼歯(頬側と舌側)のFIの検査も含まれていました。
その結果を1度(FIが触知できる)、2度(根分岐部にプローブが水平的に3-8ミリ入る)、3度(8ミリ以上入る)に分類しました。
最終的には1897人の3267本の大臼歯(上顎1707歯、下顎1560歯)のデータが分析されました。
その結果、まず、フォローアップ期間の11年で375人(19.8%)の患者で大臼歯の喪失が起こっていました。
喪失した大臼歯の中でFIがなかった歯の割合は5.6%、1度の場合は12.7%(上顎13.5%、下顎11.8%)、2度では34.0%(上顎34.58%、下顎32.9%)、3度が55.6%(上顎53.3%、下顎60.0%)でした。
初期のPPDとCALが、大臼歯の喪失と関連していました。
ベースライン時にFIがない場合と比較すると罹患率比(IRR)は、FIがある場合に有意に高くなりました。
CALに関しては、その増加とFIに関連がみられず、またPPDについてはFIがない場合に最も多く増加し、2度および3度の場合、増加の程度は低かったことが認められました(しかし、喪失した歯はこの分析には含まれていないので、解釈には注意が必要です)。
これらの結果から、この研究の著者らは、メンテナンスを受けていない一般市民の大臼歯が喪失する危険性は、FIがある場合に、またFIが重症なほど高くなることの根拠が見出されたと結論づけました。
(参考文献)
The effect of furcation involvement on tooth loss in a population without regular periodontal therapy.
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1897人の3267本の大臼歯(上顎1707歯、下顎1560歯)の根分岐部病変の11年後の予後についての文献です。
同じ歯周病でも、根分岐部病変0度の場合と比較して、根分岐部病変1度は1.73倍、根分岐部病変2度と3度は3.88倍、歯の喪失リスクが高いという結果になりました。