歯科インプラントの臨床結果にクラウン-インプラント比が及ぼす影響

・歯科インプラントの臨床結果にクラウン-インプラント比が及ぼす影響:システマティックレビュー
本研究は1歯から数歯の欠損のインプラント上部構造のクラウン-インプラント(c/I)比とインプラントの残存率、インプラントの辺縁骨吸収および補綴的合併症の発現との関係を記述した論文のシステマティックレビューである。
ショートインプラント(SI)、あるいはエキストラショートインプラント(ESI)は、顎骨の吸収が大きく、上顎では洞底が近い症例、下顎では下顎管が近い症例に適用される。
このような症例では対合歯列までの距離が長いために、インプラントが短いだけでなく、C/I比が大きくなるという負の因子が加わる。
本研究ではC/I比1.5で区切り、C/I比が1.5を超える場合とそれ以下の場合とで残存率などを比較した。
その結果、歯冠長が大きいとESIの残存率が低下し、インプラント周囲辺縁骨の吸収が増大するという証拠はないとの結論であった。
通常、ESIは単独埋入を避け、他のESIあるいは長いインプラントと連結することが原則とされる。
本研究では、単独歯欠損と複数歯欠損を交えて研究対象としているため、SIの単独埋入での残存率およびインプラント周囲辺縁骨吸収が、長いインプラントの単独埋入と差がないということではない点を確認したい。
本論文の著者であるRavidaらのもう1編のESIのレビュー論文では、上顎に埋入されたESIの5年での残存率は90.6%とやや低く、一方、下顎では5年で96.2%と高い残存率を示した。
さらに非連結の補綴的合併症の発現頻度は連結されたESIの3.3倍多く、スクリューの緩みは15.2倍多かったと記述している。
またボーンレベルのESIの1年での辺縁骨吸収はティッシュレベルのESIに比べよりおおきな辺縁骨吸収を認めたと記述している。
Penarrocha-Oltraらは吸収が顕著な下顎臼歯部に、1群はブロック骨移植で歯槽部増高を図り通常長さのインプラントを埋入、2群は既存骨に骨内長5.5ミリの複数のESIを埋入した。
2群は既存骨に骨内長5.5ミリの複数のESIを埋入した。
その結果、前者の1年後のインプラント成功率は95.5%、残存率は91.%、後者のESIの残存率は97.1%、成功率も97.1%と、1年の短い経過であるが下顎の既存骨に埋入したESIは高い成功率を示した。
これらの研究を総合してESIの臼歯部単独歯欠損への応用は避ける。
やむを得ず適用する場合は、患者に失敗のリスクが高く推奨できないことを説明する。
複数歯欠損であれば、ESIは隣接するインプラントと連結する。
またインプラント体の中心軸から離れた咬合面の部位での咬合接触をさける、グループファンクションにするなどの上部構造への配慮が必要である。
(参考文献)
Ravida A, Barootchi S, Alkanderi A, Tavelli L, Suarez-Lopez Del Amo F. The effect of crown-to implant ratio on the clinical outcomes of dental implants: a systematic review . Int J Oral Maxillofac Implants 2019; 34(5) : 1121-1131.
*****
ショートインプラントの治療予後については有意差のあるレベルで結果が悪いというデータはこれまであまりなかったように感じます。
今回の報告により、ショートインプラントあるいはエキストラショートインプラントを特に上顎に単独で使用することは避けるべきであることが明らかになりました。

2020年3月15日

hori (08:10)

カテゴリ:アバットメントの強度

« 細いファイル、太いファイル、どちらが折れやすい? | ホーム | IARPDはRPDと比較して、義歯の安定、咀嚼および審美性に有意に優れる。 »

このページの先頭へ