オールオンフォーと高床式インプラント義歯
・Abrahamssonら(1997)によると、アバットメントの着脱回数が多いと骨吸収が進みます。
アバットメントを外し結合組織が露出した状態は創傷と同じなので、そのまま置いていると上皮が埋入してきます。
そこにアバットメントを再装着すると、生体として生物学的幅径を維持するため結合組織を確保しようと骨吸収が生じます。
ですから、アバットメントを繰り返し着脱する行為はあまりよくないと思います。
フィクスチャーとアバットメントの接合部が歯肉縁上にあれば、プラークコントロールは容易ですから外す必要がありません。
接合部で細菌が繁殖しても、離れた位置にあるインプラントや軟組織に直接的な問題は起こりません。
しかし、接合部が歯肉縁下にあり、メンテナンスのたびにアバットメントの着脱を繰り返していると、軟組織にダメージを与えるようになります。
このことを踏まえると、可撤式の意味を考え直す必要があると思います。
(日本歯科評論 2014年 11月号)
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インプラントを傾斜埋入するオールオンフォーという治療法では、インプラントを傾斜して埋入した部位の清掃が困難なので、定期的に上部構造(アバットメント)を外して清掃する必要があります。
しかしながら、上部構造を外すと骨レベルが低下することが、今回のAbrahamssonら(1997)らの研究報告で明らかになっているので、歯科医師はオールオンフォーの上部構造をあまり外したがりません。
上部構造を外すと軟組織にダメージを与え、骨レベルが低下する。
上部構造を外さないでいると、清掃不良から、骨レベルが下がり、インプラント周囲炎になる。
装着感の良いオールオンフォーを製作する時点で、結局は経時的に骨レベルが下がるのではないでしょうか。
そうであるならば、かつての高床式のインプラント義歯が良いということになるのですが、装着感が悪いという患者さんの訴えで、すでに過去のものとなっています。
(因みに、この高床式のインプラント義歯は、食べ物が挟またり、発音障害があったりという問題点があり、おそらく現在行われておりません。)
オールオンフォーなどの最新治療も、見方によっては、時代遅れの高床式インプラント義歯に劣る点があるかも知れません。
やはりここでも「最新が必ずしも最善ではない」ということになるのでしょう。