インプラントと口臭の最近のブログ記事
口腔細菌の共生で口臭物質が増大。
大阪大学大学院歯学研究科天野教授らにより、口腔常在細菌のSg菌とFn菌が共生をすることで、口臭原因物質メチルメルカプタンが約3倍に増えることが分かった。
(アポロニア21 2024年4月号 )
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何らかの方法で、メチルメルカプタンが産生される経路を阻害することができれば、口臭を減らすことが可能と考えられます。
マスク生活の弊害 「口臭」「口の渇き」2割
20歳から60歳の男女1000人を対象にした「夏のマスク着用意向調査」では、「口臭が気になるようになった」24.4%、「口の渇きが気になるようになった」22.9%、「口呼吸になりやすくなった」15.8%、「気が付いたら歯を食いしばることがある」11.0%「虫歯や歯周病が増えた」5.3%、「一日の歯磨きが減った」2.9%であった。
(アポロニア21 2022年9月号 )
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口臭が気になるようになった」24.4%が最も多い結果となりました。
マスクに付着した唾液は時間が経過すると、嫌な臭いを発する場合があるので、マスクを外した際に、口臭が気になる場合はあると考えられます。
普段の口腔ケア6割が自信なし
普段行うオーラルケアに自信がない人は6割以上。
調査は、インターネットで60歳以上の男女400人に行った。
自分が普段行っているオーラルケアに自信があるか(n=400)では、「自信がある」6.0%、「どちらかというと自信がある」30.5% 、「どちらかというと自信がない」52.3%、「自信がない」11.3%。
自分の口臭がある人(n=276)に原因は何だと思うかを聞くと、「においの強い食べ物」53.3%、「歯垢」42.8%、「長時間のマスク着用」41.7%などの回答が目立った。
(アポロニア21 8月号 )
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自分の口臭の原因に、「長時間のマスク着用」41.7%という回答が少なくないのも、このコロナ禍が関係しているだろうと考えています。
唾液分泌量が少ないと虫歯リスクが増大する。
・日本の成人を対象とした研究では、虫歯経験歯率のオッズ比を刺激唾液の分泌量で比較した結果が示されています。
刺激唾液の分泌量が少なくなるにつれて、虫歯経験率のオッズ比が高くなる傾向がみられ、3.5mL/分超のオッズ比を1.0とすると、2.5mL/分以下の人のオッズ比は約1.8でした。
(参考文献)
Shimazaki Y, et al. Stimulated salivary flow rate and oral health status. J Oral Sci 2017 ; 59(1): 55-62.
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今回紹介した論文以外にも、刺激唾液の分泌量が1.0mL/分以上の比較して、0.6mL/分以下の人出は虫歯リスクが2.4倍あったとする米国における研究報告もあります。
唾液の中には細菌の増殖を抑える働きのある物質が存在するため、唾液が少ない人は虫歯、歯周病、インプラント周囲炎に罹りやすいといえます。
また、唾液が少ないと口臭発生原因の一因となります。
感染症予防に「Ig-A」が有効。
・感染症予防に「Ig-A」が有効。
マスク着用で口臭が気になる人が急増した原因の一つとして、唾液量の減少があげられる。
口腔内は細菌の巣窟。
ウイルスをも存在する感染症の入り口で、唾液量の自浄作用が少なくなると、新型コロナやインフルエンザに感染する割合が高くなるとし、感染予防として唾液・口腔ケアの必要性を訴えた。
さらに唾液に含まれる「Ig-A」に抗菌成分があり、新型コロナが口腔内の粘膜に付着するのを防止する作用があることを説明したほか、新型コロナの侵入に必要な感染因子が舌の表面にあるとの研究結果を示した。
(アポロニア21 2020年12月号 )
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新型コロナの影響で一日のうちのマスク着用をしている時間が長くなっているものと考えられます。
そのため、マスクをしていない状況であれば、比較的気軽に水分摂取をしていたものが、マスクを外すという一手間があるために、水分摂取量が減少していることが推測されます。
また、新型コロナ自体がストレスなので、自律神経が交感神経優位な状態になり、唾液量が減少していることも考えられます。
新型コロナ対策に、意識的に水分摂取を心掛けて、唾液中の「Ig-A」の抗菌成分をうまく作用させるとよいでしょう。
る必要があると感じました。
歯周病特有の口臭成分とは?!
口臭の原因の主体は揮発性硫黄化合物とよばれる硫化水素、メチルメルカプタン、硫化ジメチルです。
硫化水素は多くの細菌種が産生し、生理的口臭の原因物質となっています。
一方、メチルメルカプタンは主として歯周病菌から産生されるため、歯周病に特徴的な口臭成分です。
硫化ジメチルによる口臭は肝臓疾患などの全身疾患由来の場合があります。
これらの揮発性硫黄化合物は特有の臭いをかぎ分けられるようになればしめたものです。
揮発性硫黄化合物は嗅覚を麻痺させる作用もあり、患者さん自身は臭いを強く感じていないと考えられています。
(歯科衛生士のための21世紀のペリオドントロジーダイジェスト )
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揮発性硫黄化合物は嗅覚を麻痺させる作用もあり、患者さん自身は臭いを明確には認識することができないことがわかりました。
また明確には認識できないゆえに、大して口臭がきつくないのに、他人に迷惑をかけているのではないだろうかと過度に悩む人が出てくるのだと考えられます。
国民の8割が、自分の口臭が気になっている!
・日本歯科医師会が全国の10-70代の男女1万人を対象にした意識調査によると、国民の80.6%は自分の口臭が気になった経験があるものの、実際に歯科医院に行くのは、9.4%だった。
自分の口臭が気になった経験のある割合は性別でみると男性(n=5100人)は76.2%、女性(n=4900人)は85.3%。
年代別では、女性は30代(n=1214人)が89.3%と最も高く、次いで40代(n=829人)の88.5%。
20代(n=1008人)の80.1%、10代(N=414人)83.3%などが目立つ。
男性は10代(n=181人)の80.1%が最高で、40代(n=809人)80.0%、20代(n=306人)78.4%と続く。
口臭を指摘された経験は全体の41.5%、直接的な指摘ではなく、嫌がられる態度やジェスチャーで示された経験は25.5%があると回答。
経験ありと回答した2550人に示された態度を聞くと、「自分との距離を空けられる」41.8%、「顔をそむけられる」31.3%、「話をしているときにイヤな顔をされる」29.0%などと答えている。
(アポロニア21 2016年8月号 )
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今回の調査により、国民の8割の人々が程度の差はあれ、口臭が気になっていることが明らかになりました。
口臭も意外と奥が深く、口臭で悩んでいる人の周囲には口臭で悩む人が増加する可能性があるとも考えています。
その理由を今回は、口臭の悩みを持つAさんとBさんが比較的近い距離で話をしている例で示そうと思います。
Aさんは、Bさんに自分の口臭を感じられたくないので、距離をとったり、マスクをしたり、息が届かないように顔をそむけたりしているのに、Bさんにとっては、Aさんの様々な行為が、Bさんの口臭がAさんに不快な思いをさせているのだろうかと不安にさせる行為に見えるということです。
また、人は緊張すると臭気を発するような身体の仕組みがあるので、臭いかもしれないという漠然とした悩みはさらなる不安につながることもあります。
インプラント希望で来院される患者さんは、重度の歯周病で、咬めないという悩みの他に、口臭の悩みも同時に持っているケースは少なくありません。
重度の虫歯や歯周病が原因したインプラント治療では、治療により口臭レベルは確実に低下するので、口臭測定器で前後の臭気レベルを比較するのもいいかもしれません。
日本人の口臭にがっかり
・日本人の口臭にがっかり
歯茎の健康を通じた体全体の健康を推進する団体「オーラルプロテクトコンソーシアム」が在日外国人100人(米国人60名、欧州40人)と、20-40代の日本人の男女600人にオーラルケアの実態に関するインターネット意識調査を実施した。
在日外国人に「日本人にオーラルケアを徹底してほしいか」と聞いたところ、「非常にそう思う」24%、「そう思う」48%を合わせて72%が、日本人に対して口臭予防に努めてほしいと回答している。
(アポロニア212015年12月号 )
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欧米のオーラルケアでは、プラークコントロールとブレスケアがあると聞きます。
キスやハグをする文化があるために、歯磨きだけではなく、口臭についても対策するようになったのでしょう。
一方日本では、口を手で隠す文化があったために、お口のコンディションが悪いと本人が考えている場合には、マスクをしたり、お話をするときに口を手で隠したりする方向に進んだのかもしれません。
それにしても文化の違いが大きいので、ブレスケアを行っている外国人が、それを行っていない日本人に対して口臭を感じるのは仕方がない面もあると思います。
というのも、ブレスケアを行い、自分を無臭化すると、逆に相手の口臭が気になるようになるからです。
また、今回のデータにはありませんが、正しいブレスケアを行っている日本人は少ないと考えられるので、日本人同士で相手の口臭が気になる割合はこれよりも低い値になると考えられます。
話は変わりますが、インプラント治療希望の方でも口臭を気にされている方がいます。
その多くは、歯が歯周病で膿が出ているケースで、その場合は確実に口臭の原因となっています。
当然のことながら、悪い歯を抜けば口臭レベルは低下します。
歯周病が悪化すると、口がネバネバするのにも意味があった。
・歯周病研究において、ラット大臼歯に糸を結紮する歯周炎に関する動物実験の結果から、歯周炎の誘発は唾液腺細胞にアポトーシスを引き起こし、唾液分泌能を低下させるというものであった。
つまり、疫学調査において報告されている歯周病患者の唾液分泌能はもともと低かったわけではなく、歯周病発症により低下した可能性が出てきたのである。
九州歯科大学 健康増進学講座 生理学分野の研究では、歯周病モデルラットは耳下腺腺房細胞レベルの受容体、細胞内情報伝達、水輸送分子発現に何ら異常を認めなかったため、腺房細胞の減少が唾液唾液分泌能低下の主な原因であると結論づけた。
興味深いことに、結紮糸を撤去して歯肉炎症の消失を待ったところ(歯槽骨吸収は残る)、唾液腺体積と唾液分泌能は対照群と同程度まで回復した。
つまり、歯周炎発症による唾液分泌能の低下は可逆性であった。
ということは、歯周疾患者で明らかな唾液現象を認めた場合でも、適切な治療により歯肉の炎症を抑えれば、患者の唾液を正常な状態まで戻すことが可能であるかもしれない。
唾液腺は水分泌とタンパク分泌量が少ないとむしろ唾液中の保護成分の濃度を上げることになる。
前出の日本での高齢者歯周病患者での調査では、唾液の分泌能低下に加えて、曳糸性が報告されている。
この性質は唾液中のムチン濃度に依存しているので、歯周病患者の唾液ムチン濃度は高いようである。
また、歯周病患者の唾液中免疫グロブリンAの濃度が高いことから、歯肉炎による唾液分泌能の低下は、むしろ唾液中の保護成分の濃度を上げるための歯肉炎防御反応といえるかもしれない。
唾液分泌能の低下が可逆的であったことは、病理的というよりは生理的な変化であることを示唆している。
シェーグレン症候群や放射線治療を受けた患者並びに唾液腺摘出ラットでは、唾液が過度に分泌されなくなるために唾液の口腔保護作用まで失われるが、歯周炎による唾液分泌能の低下はそこまで深刻ではない。
(日本歯科評論 2015年2月号 )
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まとめると、歯周病の状態が悪化すると、
1.唾液分泌量が減少する。
2.唾液が減少すると、歯肉の保護成分の濃度を高める。
3.歯肉の保護成分は、それ自体がネバネバする成分なので、お口がネバネバする。
一方、また、歯周病発症による唾液分泌能の低下は可逆性であったということですから、歯周病の状態が改善すると、
1.唾液分泌量が増加する。
2.唾液が豊富にあるので、ネバネバした歯肉の保護成分の濃度を減少させる。
3、その結果、お口がサラサラした状態になる。
こうして考えると、口臭でお悩みの方は、口がネバネバすると仰る方が多いのですが、ネバネバするのにも"きちんとした意味"が
あるということが今回の文献で分かりました。
また、唾液が少なくてネバネバした状態が増長しているのであれば、唾液分泌が増大するようにすればよいということになります。
具体的には、歯周病の歯があるのなら歯周病治療を受け、インプラントがあるのならメンテナンスをしっかり受けて、歯肉の状態を改善すれば、自然と口臭の悩みも払しょくすることができるということになりますね。