骨質、インプラント径、表面性状が長期的なインプラント周囲骨吸収に及ぼす影響

・骨質、インプラント径、表面性状が長期的なインプラント周囲骨吸収に及ぼす影響
(目的)
インプラントの短・長期的な残存率および成功率に関係する因子の一つとしてインプラント周囲の辺縁骨吸収(MBL)が挙げられる。
本研究の目的は、長期的な観察において臨床的所見およびインプラントに関連する因子がMBLに及ぼす影響を検証することである。
(材料および方法)
172名の患者に埋入された558本のインプラントにおいて、MBLと臨床因子、インプラント関連因子、補綴設計関連因子との関係を調べた。
MBLはデジタルX線写真におけるスレッドの様相を基準として、コンピュータソフトウェアを用いて解析した。
(結果)
線形混合モデルによる解析により、以下の項目において有意差が認められた。
:タイプ4の骨における平均MBL(辺縁骨吸収)(0.047ミリ/年)は、他の骨質に比べると、有意に小さな値を示した(タイプ3の骨:0.086ミリ/年、タイプ2の骨:0.112ミリ/年、タイプ1の骨:0.138ミリ/年)。
インプラントの直径が1ミリ増すごとに平均MBLは0.033ミリ/年で大きくなった。
表面性状がスムースなインプラント(0.103ミリ/年)は、ラフなもの(0.122ミリ/年)と比べて小さなMBLを示した。
また、インプラント支持型全部床義歯以外の補綴設計においてMBLが認められた。
(結論)
本研究は後ろ向き研究であるため、限界が認められるものの、タイプ4の骨、直径の小さなインプラント、スムースなインプラント表面性状、インプラント支持型全部床義歯において小さな平均MBLが認められた。
(参考文献)
Relationship between long-term marginal bone loss and bone quality, implant width, and surface Lbanez C, Catena A, Galindo-Moreno P, Noguerol B, Magan-Fernadez A, Mesa F. Int J Oral Maxillofac Implants 2016 ; 31(2) : 398-405.
*****
上顎大臼歯部などのタイプ4などの骨質では、直径が大きくラフな表面性状のインプラント体を選択し埋入すると、インプラントの初期固定を得る可能性が高まります。
インプラント周囲の組織に動きがない方が、インプラント周囲に骨ができやすいので、初期固定を重視してきた歯科医師も多いかと思います。
しかしながら今回の文献により、骨が圧迫されるような力がかかるインプラント埋入(高トルク埋入)を行う程、MBLが有意な差をもって生じることが明らかになりました。
高トルクでインプラント埋入を行うと、インプラントを埋入したその日から咬めるというメリットはありますが、MBLが大きくなるのではやはり良いとは言えません。
患者さんのQOLを少しばかり向上させることよりも、長期的に考えて一番良い方法を選びたいものです。

2016年10月30日

hori (10:55)

カテゴリ:オールオンフォー

« プロバイオティクスで歯周病予防?! | ホーム | インプラント補綴のレジンセメントの使用について »

このページの先頭へ