オーバーサイズドリリングのインプラントの安定性
・オーバーサイズドリリングのインプラント残存および安定性に及ぼす影響:通常プロトコルとの比較によるランダム化比較試験
(目的)
本研究の目的は、オーバーサイズドリリングのインプラント安定性への影響とオッセオインテグレーションにおける骨反応への影響を検証することである。
(材料および方法)
本研究は上顎臼歯部に埋入された20本のインプラントに関する前向きパラレルランダム化比較試験である。
10本ずつ2群に分け、一方の群(MR群)ではメーカー住要通りの埋入窩形成を行ったのに対し、もう一方の群(オーバーサイズドリリング「OD群」)ではオーバーサイズの埋入窩形成(形成深度3-5ミリ)が行われた。
インプラントの安定性は術後3か月の間共振周波数分析(ISQ値)によってモニターされ、辺縁骨レベルは6か月後の平行法デンタルX線撮影によって評価された。
疼痛、腫脹、満足度、インプラント残存率など、患者報告アウトカムは試験期間中を通して記録された。
(結果)
MR群では、最初の4週間はISQ平均値の低下が認められたが、その後は徐々に上昇が認められた。
一方、OD群では、ベースラインから12週目までの全追跡期間において、ISQ値の急激な上昇が認められた。
ベースラインと6か月後における辺縁骨レベルのX線写真比較では、OD群では0.908±0.343ミリであったのに対して、MR群では1.3±0.23ミリであり、群間に統計学的有意差が認められた(P=0.00)。
(結論)
本研究の限りにおいて、オーバーサイズのインプラント埋入窩形成では、メーカーが推奨する埋入窩形成と比較し、インプラント安定性および術後の回復が早くなる可能性が示唆された。
しかし、これらの知見を確認するにはさらなる研究が必要である。
(参考文献)
Seleem A, Tawfik OK, El-Nahass H. Evaluation of oversized drillig on implant survival and stability versus traditional drillig technique: randomized trial. Int J Oral Maxillofac 20221 ; 36(4)771-778.
*****
実験に使用されたインプラントは直径4.0ミリ、長さは10ミリあるいは11.5ミリとのことでした。
また、埋入するインプラントの辺縁骨寄り30-43%の部位をオーバーサイズドリルを併用したということになります。
これは、すなわち、辺縁骨の皮質骨を中心に初期固定を得るよりも、インプラント先端に近い部位で初期固定を得た方が結果が良いということになるでしょう。