下顎前歯の形成は便宜抜髄を行う方が無難かもしれない。
アテネ大学の卒前学生が患者33名の有髄歯120歯を形成し、クラウン装着時までの間無症状に失活する頻度を調べた前向き研究
・形成後に電気診で歯髄の生死を判定した。
・臨床症状が出現したような歯は対象歯から除いた。
・無症状の失活は術前に齲蝕や歯冠修復歯のある歯で頻度が高かった。
・下顎前歯は小さいために形成により象牙質が薄くなり、術前が健全歯でも失活しやすかった。
術前が健全歯
上顎前歯 100%
上顎臼歯 100%
下顎前歯 89.4%
下顎臼歯 100%
術前に齲蝕、修復物、クラウンあり
上顎前歯 84%
上顎臼歯 89.4%
下顎前歯 66%
下顎臼歯 90.4%
(参考文献)
Kontakitotis EG, et al. Aprospective study of the incidence of asymptomatic pulp necrosis following crown preparation. Int Endod J. 2015; 48(6): 512-517.
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オールセラミックス等の自由診療の被せ物を行う場合、最初に神経を除去するかどうかは、各歯科医師が経験則で判断していました。
しかしながら、今回の報告により、特に下顎前歯の審美治療では、便宜抜髄後に歯冠形成を行った方が無難であることが分かりました。
また、それ以外の部位でも10本に1本あるいは2本は、修復治療が終了した後に失活するリスクがあるために、患者さんと相談の上、治療方針を決定する必要性があるといえます。
仮に修復後に失活歯、不快症状が続く際には、上からアクセスして根管治療を行うこともできますが、メタルセラミックスなどのメタルを使用した冠で再補綴を行わない場合には、根管長測定がしにくい問題や根管充填後の封鎖性が確実ではないなどの問題も出てきます。
迷ったら、根管処置を行う方が無難ですね。
中間欠損部位にインプラント治療を行う際には、前後の歯も形成し、インプラント上部に仮歯を手術当時から用意することも可能です。
(即時インプラントや暫間インプラントの利用など他にも仮歯を用意する方法はありますが。)
そのような場合、埋入したインプラントと根尖病巣のある天然歯が近接するリスクが生じる場合があるので、インプラントを長持ちさせるためにも、予後に不安のある天然歯は根管治療を済ませておいた方が良いと考えています。