骨の再生には感覚神経の再生も重要か?
Semaphorin3Aというたんぱく質において高発現しているが、その役割については不明な点が多かった。
Semaphorinは、もともと細胞間のシグナル伝達にかかわる一連のタンパク質群で、神経回路の形成や免疫細胞の調節に関わっており、7つのサブファミリーに分けられている。
Semaphorinは主として神経系の働きを調節していることが知られており、特にSemaphorin3Aは神経軸索の再生に関わるほか、免疫系においては樹状細胞が微小リンパ管を移動することに関わると報告されていた。
2013年に慶応大学の福田らは、神経に発現しているSemaphorin3Aを特異的にノックアウト(遺伝子欠損)すると骨量が減少し、しかもそのノックアウトマウス(Semaphorin3Aタンパク質がないマウス)では海綿骨中に分布する感覚神経の数が減少していることを報告した。
また、通常のマウスでも感覚神経を切除すると骨量が減少することから、正常な骨代謝はSemaphorin3Aによって調節される感覚神経の発生が重要な役割を果たしていることが明らかになった。
このような報告から見ると、骨再生においては脈管系の再生と同様に、感覚神経の再生も必要であるかもしれない。
(顎骨再生 より)
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インプラント治療で歯槽骨量が不足している場合、いわゆる骨造成を行います。
この骨造成とは萎縮した顎堤に自家骨を別のところから持ってきて、必要な部位に盛り足す治療行為を指します。
仮に自家骨であっても、骨が生着するころには、持ってきた自家骨が30%近く目減りすることを考えると、骨造成した部位に神経や血管が張りめぐらされた状態にできる範囲が骨造成の限界量なのかもしれません。
仮に造成時にSemaphorin3Aを増やすことが可能であれば、骨造成の限界量も増大させることができる可能性があります。今後の研究に期待したいところです。