インプラントオーバーデンチャーの最近のブログ記事

IARPDはRPDと比較して、義歯の安定、咀嚼および審美性に有意に優れる。

・Wismeijerらの研究では、片側もしくは下顎両側性遊離端欠損症例において、IARPDはRPDと比較して義歯の安定(P=0.029)、咀嚼(P=0.001)および審美性(P=0.009)に有意に優れており、さらにヒーリングキャップによる支持のみを与えた群よりボールアタッチメントを用いた群の方が満足度(P=0.024)、義歯の安定(P=0.007)、咀嚼(P=0.003)及び審美性(P=0.001)は有意に高かったという報告がある。
この二つの研究から、アタッチメントを装着しなくても、遊離端後方部にインプラントを埋入し、義歯を支持させることによって、満足度は有意に向上し、アタッチメントを装着すると支持に加えて維持力も発揮され、さらに満足度が向上する可能性が示唆された。
(参考文献)
Wismeijer D, Tawse-Smith A, Payne AG. Multicentre prospective evaluation of implant assisted mandibular bilateral distal extension removable partial dentures: patient satisfaction. Clin Oral Implants Res. 2013; 24(1):20-27.
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IARPDはRPDと比較して、義歯の安定、咀嚼および審美性に有意に優れることが明らかになりました。
少ないインプラントで患者さんの満足を獲得する方法としては、IARPDは有効な手段であると考えられます。

2020年3月20日

hori (08:18)

カテゴリ:インプラントオーバーデンチャー

IODの成功の基準

・PayneらはIODの成功の基準として、
1. IODを装着してから最初の1年で維持装置の修理は2回以内。
2. 5年以内に維持装置の修理は5回まで。
3. 5年以内でリライニングは1回まで。
の3つの条件を示している。
(参考文献)
Payne AG, Walton TR, Walton JN, Solomons YF : The outcome of implant overdentures from a prosthodontic perspective: prpposal for a classification protocol. Int J Prosthodontics, 14 : 27-32, 2001.
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当院でもIODを行っていますが、全員この条件をクリアしています。

2020年1月 5日

hori (08:04)

カテゴリ:インプラントオーバーデンチャー

1-IODから2-IODにより、義歯の維持力は約3倍に増大。

・ロケーターアタッチメントを用いる場合、インプラントが1本から2本に増えると義歯の維持力は約3倍に増加する。
さらにインプラントが4本に増えることで維持力は約6倍に増加することが報告されている。義歯に高い維持力を求めるには、より多くのインプラントを埋入する方が有利であるが、インプラントの埋入本数が増えれば患者の負担は増大する。
したがって、義歯が安定するために必要な維持力を考慮すると、2-4本程度の本数が望ましい。
(歯周病患者へのインプラント治療の実際 )
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当院でも、ロケーターアタッチメントによるIOD治療を行っています。
そのコンセプトは、治療コストを抑え、そして同時に患者満足度も下げないということなので、基本的には2-IODで行っています。

2019年11月15日

hori (08:34)

カテゴリ:インプラントオーバーデンチャー

2-IODと4-IOD

・Feineのテキストブック「Implant overdenture」には、「2-IODの方が4-IODよりも臼歯部顎堤における骨吸収が大きくなるために、若年者である場合には、4-IODも考慮に入れるべきである」と記載されている。
また、比較的新しい2010年の研究からは4-IOD、2-IODどちらにおいても下顎臼歯部の骨吸収は起こるが、有意な差が認められないことも報告されている。
これらのことから、臼歯部の骨吸収は15-20年という長期観察により明確になるもので、65歳を超える患者であれば臼歯部骨吸収を気にする必要はない。
(参考文献)
Tymstra N, Raghoebar GM, Vissink A, Meijer HJ. Maxillary anterior and mandibular posterior residual ridge resorption in patients wearing a mandibular implant-retained overdenture. J Oral Rehabi. 2011 ; 38(7) : 509-516.
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年齢によって、第一選択が、2-IODであるのか4-IODであるのか変わることが明らかになりました。

2019年4月20日

hori (08:06)

カテゴリ:インプラントオーバーデンチャー

直径1ミリ以上の正中舌側管と側方舌側管の頻度

下顎正中の舌側には24.8%の頻度で直径1ミリ以上の正中舌側管が認められる。
下顎骨舌側の骨の高まりをSpinosumとすると、インプラント埋入に関わる可能性の高いSpinosumより上方では11.9%の頻度で舌側管が認められる。
(参考文献)
Wang YM, Ju YR, Pan WL, Chan CP. Evaluation of location and dimensions of mandibular lingual canals: a cone beam computed tomography study. Int J Oral Maxillofac Surg. 2015 ; 44 (9) : 1197-1203.
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下顎前歯部にインプラント治療を行う場合には、舌側管の存在に配慮しなくてはなりません。
下顎骨自体が硬いことが多いので、CT所見を読影すれば、細い舌側管でも比較的容易に、その位置を把握することができます。

2019年2月 5日

hori (15:07)

カテゴリ:インプラントオーバーデンチャー

無歯顎患者にインプラントをした場合、インプラント周囲炎にはならないのか?

・10年フォローアップ期間における無歯顎患者へのインプラント支持型下顎オーバーデンチャーのインプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎の発症率

目的:2編の前向き研究のサブ分析の目的は、無歯顎患者への10年間のフォローアップ期間におけるインプラント支持型下顎オーバーデンチャーのインプラント周囲粘膜炎およびインプラント周囲炎の発症率について調べることである。

材料および方法:下顎オーバーデンチャーを支持する2本の骨内インプラントを有している150名の無歯顎患者が2編の前向き研究から抽出された。
臨床的およびX線学的パラメータについてオーバーデンチャー装着後、5および10年で評価された。
インプラント周囲粘膜炎およびインプラント周囲炎の発症率はインプラント周囲炎に対するConsensus of Seventh Workshop on Periodontologyに基づいてインプラントおよび患者レベルで算出された。
結果:インプラント周囲粘膜炎の患者レベルの発症率は、5年後評価で51.9%、10年後評価で57.0%であった。
インプラント周囲炎の患者レベルの発症率は、5年後評価で16.9%、10年後評価で29.7%であった。
結論:インプラント周囲粘膜炎およびインプラント周囲炎は無歯顎患者にも発症し、その数は多かった。
(参考文献)
Incidence of peri-implant mucositis and peri-implantitis in edentulous patients with an implant-retained mandibular overdenture during a 10-year follow-up period. Meijer HJ, Raghoebar GM, de Waal YC, Vissink A. J Clin Periodontol 2014 ; 41(12) : 1178-1183.
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10年近く前になりますが、歯周病の歯をすべて抜歯するから、All-on-4はインプラント周囲炎にはならないと以前聞いたことがありました。
しかしながら、後になって、歯牙をすべて抜歯しても、インプラント周囲炎の原因細菌は口腔内に依然として存在するために、All-on-4であってもインプラント周囲炎になるリスクはあるようです。
そしてさらに、歯槽骨に斜めに埋入するAll-on-4は、通常の埋入の場合と比較した場合、清掃性が悪いと考えているので、当院ではAll-on-4は行っておりません。

2018年10月10日

hori (08:11)

カテゴリ:インプラントオーバーデンチャー

ジルコニアインプラントの予知性は、現在のところ疑問がある結果。

・上下無歯顎者24人にインプラントオーバーデンチャー(以下、IOD)の固定源としてジルコニアグループとチタングループを12名ずつランダムに振り分け、1年間の臨床評価をしている。
生存率が下顎でチタン95.8%、ジルコニア90.9%、上顎でチタン71.9%、ジルコニア55%であった。
また、ジルコニアの予知性に疑問のある結果を示している。
(ザ・クリニカル クエスチョン )
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これも最新が最善とは限らないという一例ですね。
今後に期待したいところです。

2018年8月 1日

hori (08:59)

カテゴリ:インプラントオーバーデンチャー

ロケーターは、4年経過から不具合が多くなる。

・ロケーターにおいては、4年経過から不具合が多くなる。
(参考文献)
Five-year clinical traial using three attachment systems for implant overdentures. Cristache CM, Muntianu LA, Burlibasa M, Didilescu AC. Clin Oral Implants Res 2014; 25( 2 ): e171-178.
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当院でもロケーターを用いた2-IODを行っています。
最初の症例は、海外から個人輸入したロケーターを使用した記憶があります。
治療を終えてから、5年ほど経過しましたが、その状態については、「若干義歯が緩くなったけれど、支障なく使用できている」と患者さんからは聞いています。
ロケーターの雌部は樹脂製であるために、経年的に劣化します。
メーカーは3-4か月で交換することを推奨すると聞いたことがありますが、個人的にはそこまで劣化は早くはないと感じています。
また、雌部に使用する樹脂製の部品の交換は、治療前から想定されるものなので、トラブルに含めるべきではないと考えています。

2018年7月25日

hori (08:30)

カテゴリ:インプラントオーバーデンチャー

コーヌスデンチャーと認知症

・コーヌスデンチャーと認知症
複雑な設計のコーヌスデンチャーは、認知症が進むと着脱しにくく、清掃性も悪くなる。
装着しないまま咬合が変化して不適合になってしまっているケースが少なくない。
全身疾患などの変化を考え、義歯をメンテナンスしやすい形態に変える必要がある。
(アポロニア21 2018年4月号 )
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コーヌスデンチャーを推奨している歯科医師は、寝たきりになった際にも変化に対応しやすいと説明している方が多いです。
しかしながら、認知症の患者さんの歯科治療を多く手掛けている方の意見では、むしろコーヌスデンチャーの悪い面が出てしまっているという指摘があります。
ブリッジが力学的に適当ではないようなケースに対してコーヌスデンチャーを選択した場合、支台となっている歯牙が1本でも歯根破折等で抜去せざるを得ない状態になると、支える歯牙の数が減少しますから、軟らかいものしか食べていないのに義歯が痛いという状態になります。
義歯を入れても痛い場合には、次第に装着しなくなるのが人間ですし、支台となっている歯牙が挺出してきたり、傾斜してくると、ますます義歯をいれることすらままならなくなります。
また、咬めない状態が長く続くと、一層認知症の症状が進行するという他の研究報告もあります。
義歯の長期症例というと決まって登場するのが、このコーヌスデンチャーですが、そのようなケースの多くは、患者さんの年齢が若い時期から使用しているがゆえに、長期症例となっているケースが多いように感じます。
近年8020を達成している高齢者がかなり増加しているという背景を考えると、コーヌスデンチャーよりは必要な部位にインプラント治療を行う方が患者さんの利益につながると考えています。

2018年6月 1日

hori (08:49)

カテゴリ:インプラントオーバーデンチャー

硬質レジン歯は着色しやすい。

・レジン歯は義歯床と同じように紐状の分子構造のアクリルレジンでできています。
透明度が高く、義歯床ともよく接着するが、「摩耗しやすい」という欠点があります。
それを改善するために、硬質レジン歯では網目構造のレジンを使い、さらに、フィラーを加えることで耐摩耗性を向上させました。
しかし、このフィラーは摩耗には強いものの、レジンとの境界部が着色しやすい欠点があるのです。
したがって、レジン歯に比べて硬質レジン歯の方が着色しやすいということになります。
(歯科衛生士 2018年2月号 )
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硬質レジン歯は、レジン歯の摩耗しやすいという欠点を改善するために開発されました。
当然のことながら、人工歯の耐摩耗性は向上しましたが、摩耗に対抗するために加えられたフィラーがレジンとの境界部を着色しやすいという別な欠点を有するようになりました。
歯科学は材料とともに進化していますが、材料も右肩上がりにすべての面で改善が見込めるわけではないのだなあと痛感しました。

2018年5月15日

hori (10:46)

カテゴリ:インプラントオーバーデンチャー

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