親不知抜歯とインプラント
2回法抜歯では、1回目の処置後の待機期間中に歯が移動し、智歯と下顎管との距離が生じることを期待する方法であり、歯が移動しなければ治療法の利点はない。
鹿児島大学口腔外科のデータでは、近心傾斜もしくは水平歯では約90%の歯は動くものと判断できている。
動かない歯の特徴としては、年齢(40歳以上)や1回目処置前に隣接する第二大臼歯と接していない歯、歯根の湾曲・肥大のある歯などである。
その際は歯冠除去術に準じ、歯質の削除量を多くし、歯の移動がなければ癒着歯と判断し歯根を留置するのも一つの方法であろう。
・最近では、歯冠部歯髄を積極的に削除している。
歯冠部歯髄を削除した症例で1回目処置後に歯髄炎等が生じた例はない。
( 口腔外科ハンドマニュアル 2014 )
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親不知(智歯)の埋伏、その前方の第二大臼歯の傾斜、第一大臼歯欠損。
というような歯列をお持ちの方もいます。
歯が無くてお困りの第一大臼歯に、1本のインプラント治療を行うという方法もありますが、やはり傾斜した第二大臼歯を整直させたうえで、欠損部位にインプラントを行う方が患者さんの価値観に合う場合もあります。
また、傾斜した第二大臼歯を整直させるのにも、その後方の親知らずが邪魔をしており、すぐには整直させることができない場合も少なくありません。
そのような場合、埋伏している親知らずを抜歯する必要が出てきますが、親知らずが下歯槽神経に近接している場合、第二大臼歯が整直する程度のスペースとなる親知らずの歯冠の一部を削除し、いわゆる2回法抜歯を行うこともあります。
当院では、歯列矯正を先に開始し、親不知抜歯に際して生じたスペースを無駄なく、その前方歯の移動に役立てています。
歯列矯正を治療計画に含める場合、欠損を有する歯列に歯列矯正を行うことになるので、通常の歯列矯正よりも難易度が上がります。
また、治療期間が比較的長期になります。
そうなると、患者さんの価値観によっては、親不知と第二大臼歯をともに抜歯し、第一大臼歯・第二大臼歯部位に2本のインプラント治療を行うというケースも出てくるわけです。
(整直させた第二大臼歯が、反対側の上顎歯とうまく咬まないという場合も少なくありません。)
患者さんの価値観に合わせた治療ができるように、医療従事者は"治療技術の引き出し"の数を増やす努力をしなくてはならないのです。