インプラントオーバーデンチャーでは、インプラント周囲炎が惹起されやすいのか。

・部分入れ歯の鉤歯の歯冠部を切断後、オーバーデンチャーを装着し、その前後において歯肉溝滲出液量、歯肉炎指数、プラーク指数、歯肉溝の深さについて、4つの歯面で治療前後で比較したところ、頬側でオーバーデンチャーを装着する前と装着後6か月後で、どの項目も4倍近い数値の増加となっている。
また、頬側以外の3歯面においては装着前後で大きな変化は認められず、頬側経時的に悪化し、その他の3歯面の状態に近づいていることがわかる。
このことから部分入れ歯時は、セルフケアの際、頬側のように磨きやすい部位を重点的に磨き、その他の歯面はしっかりと磨けていないことが分かる。
そして、オーバーデンチャーでは残根が床下に位置することにより清掃困難となりすべての歯面において炎症性の反応が起こるといえる。
(参考文献)
山賀 保: オーバーデンチャーへ移行時における維持歯辺縁歯肉の経時的変化. 補綴歯28(6):1010-1017,1984.
(インプラントパーシャルデンチャー IARPDの臨床 )
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費用対効果の面で、インプラントオーバーデンチャーは、患者さんにとっては受け入れやすい治療プランであるといえます。
しかしながらその一方で、固定式インプラント装置に比較してトラブルが多いこともまた知られています。
そのトラブルの原因の一つに清掃不良によるインプラント周囲炎があります。
部分入れ歯のときは、一般に義歯床で覆われていない頬側部の歯肉の状態は比較的良好だったわけですが、オーバーデンチャーになると4つの歯面が義歯床で覆われているので、すべての歯面が同様に炎症が認められるようになるようです。
(この文献では歯の丈が短くなると、磨けていた頬側さえも歯肉の状態が悪化するとのことでしたが、表面が粗造な義歯で歯肉が圧迫されていると、状態は悪化するのではないでしょうか。)
やはり、力の面でも、清掃性の面でもオーバーデンチャータイプのインプラントはよほど注意しないとトラブルが発生すると考えていた方が無難であるといえるでしょう。

2015年6月10日

hori (09:17)

カテゴリ:インプラントについて

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