根分岐部病変の予後は最大5年。
・HirchfeldとWassermanは、平均22年間でメインテナンス中に、単根歯の喪失率は4.9%であったのに対して、根分岐病変をもつ腹根歯は31.4%であったことを報告している。
McFallでも同様の傾向がみられ、100名の患者を15-29年にわたってメインテナンスを行ったところ、単根歯の喪失率が7%であったのに対して、根分岐部病変をもつ複根歯では57%に達している。
これら文献では、複根歯の予後が単根歯と比べていかに悪いかが、端的に示されている。
根分岐部病変は、アタッチメントロスの程度以上に複根歯の予後を左右し、大変重大な解剖学的リスクであることを示している。
では、こうした比較的不良な予後が与えられた歯が実際にどのような経過をたどるのか。
それはきわめて予測が困難である。
McGuireらによれば、「poor」「questionable」と判定された歯は予後が変動しており、「poor」のままだったものは一つもなかったとしている。
また、「hopeless」と判定された歯については、5年後の時点で52.3%は「hopeless」のままであった。
そして喪失した歯の平均経過観察期間は「hopeless」を除いたカテゴリーで5‐6.61年であり、「hopeless」の歯は2.68年であったと報告している。
つまり、比較的不良な予後が与えられた歯のうち、抜歯となったものの多くが5-6年の経過を待たずに失われる。
このため、予後を5年までと設定することが論理的であり、この時点で予後をもう一度判定し直す必要があると考えられる。
(参考文献)
Hirchfeld L, Wasserman B. A long-term survey of tooth loss in 600 treated periodontal patients. J Periodontol 1978; 49:225-237.
McFall WT Jr. Tooth loss in 100 treated patients with periodontal disese. A long-term study. J Periodontol 1982; 53:539-549.
McGuire MK, Nunn ME. Prognosis versus actual outcome. ?.The effectiveness of clinical parameters in developing an accurate prognosis. J Periodontol 1996; 67:658-665.