あなたの歯がなくなる理由
堀歯科医院に30年以上に亘って歯の治療を行なっている方が来院されました。
入れ歯のバネをかけていた犬歯が痛んできたのです。
痛んできた歯の後方には歯がないところが3本あり、その部分が負担するべき咬合力は当然のことながら、その痛んできた犬歯にずっしりとかかっていたのです。
もちろん、歯の痛みを取る処置をすれば、犬歯の痛みを取ることは私たち歯科医師にとっては朝飯前です。
しかしながら、その歯がなぜ痛みを感じることになったのかといえば、過大な咬合力を負担しなくてはならなかったことに原因があります。
(入れ歯は自分の歯があったころの2割程度の咬合力しか負担することができないので、咬合力が一定であるならば、残り8割の咬合力は残存する歯にかかってしまうのです。)
咬合力の分布はそのままで、痛みを感じる歯の神経を除去してしまったら、どうなるでしょうか。
歯にかかる負担はそのままですから、神経を除去した歯が破折するリスクは確実にアップします。
またこの方は、後方のバネがかかっていた第二大臼歯の動揺が大きくなってきていました。
前方の歯は過大な咬合力がかかることで、歯自体が痛みを感じるようになり、後方の歯は過大な咬合力に耐えきれずに動揺が大きくなってきていたのです。
歯をダメにする原因はいずれもその歯が負担することができる以上の咬合力ということになりますが、その反応は千差万別です。
歯科医師によっては、前方の犬歯部は虫歯、後方の第二大臼歯は歯周病と診断することもあるかもしれません。
ただ、それはあくまで結果論だということです。
結果的には虫歯や歯周病という診断名が付いてしまうことは否めないのですが、元々の原因は過大な咬合力なのです。
それでは、過大な咬合力により残存する歯牙を破壊しないようにするには、何をすればいいのでしょうか。
当然のことながら、咬合力を負担するべき歯牙の数を増やすことが何よりも重要なはずです。
歯がなくなったときには、インプラント、ブリッジ、入れ歯と3種類の治療方針がありますが、残存する歯牙の負担を減らす治療方針はインプラントのみです。
この方への私のお勧めする治療方針は、欠損している部分3本にインプラント治療をすることです。
それにより、犬歯部の痛みをゼロにするとともに、大臼歯部の歯牙の動揺を可能な限り小さくすることが可能となるのです。