インプラント治療よりも優先される治療とは
歯のないところにインプラント治療を行うことは必要なことですが、それよりもなぜその部分の歯を失うことになったかを考える必要があります。
堀歯科医院に来院される患者様のお口を拝見していると、歯にトラブルが絶えない方の多くは、前歯の働きが悪いために、奥歯の負担が大きくなりすぎていることに気づかされます。
一見歯並びが良いように見えても、咬み合わせの平面が左右で傾いていたり、その傾きが前後的に急峻な場合に、前歯と奥歯のバランスが悪くなっているケースが少なくありません。
そのため、私たち歯科医師には、インプラント治療を行う部分の骨の質や量を評価するミクロな視点と、顎関節を含めた、骨格的に無理のない状態にどのように近づけるかというマクロな視点の両方が必要となります。
例えば、何らかの原因で右咬み傾向が続いていた方が、歯根破折を起こして、右上の臼歯にインプラントが必要になったというようなケースを考えてみましょう。
この方の場合、他の歯の形態や位置、方向などを一切修正せずに、右上にインプラント治療を行うのが最もシンプルな治療計画ということになりますが、これでは数年前の右咬み傾向に戻るだけではないでしょうか。
次に起こりうることは、右上のインプラントにしっかりした治療を行えば行うほど、右下の天然歯が破壊されることが予想されます。
やはりなぜ右咬み傾向にあったのかを考えるために、歯と臼歯のバランス、左と右のバランスを診査・診断しなくてはなりません。
右に咬合力が集中することを少しでも回避するために、プロテクションスプリント(夜間の歯ぎしり・食いしばりでインプラントやセラミックスが破壊されるのを予防するために使用するマウスピース状の装置)を使用するのも重要ですが、まずは咬み合わせを可能な限り左右対象に近づけることが大切なのです。
そして咬み合わせを左右対称に近づけるためのツールとして、歯列矯正や補綴治療(被せ治療)、インプラント治療が存在するのです。
最初に"インプラントありき"ではないのです。