根面齲蝕の好発部位
根面齲蝕(虫歯)の好発部位
Ravaldら(1986)が、根面齲蝕の発生部位に関して大変興味深い報告をしています。
重度の慢性歯周炎に罹患し、外科的もしくは非外科的な歯周治療を受けた患者群の術後8年間の予後を観察したところ、歯周病のコントロールは良くなされていたものの、齲蝕の問題が生じていました。
齲蝕が発生した部位を調べたところ、上顎犬歯および大臼歯部に根面齲蝕が好発し、特に頬側面および遠心面により多く発生していました。
また、根面齲蝕の好発部位を調べたところ、約50%は修復物の辺縁に発生しており、以下、セメント-エナメル境(CEJ、25%)、歯肉辺縁(7%)という順でした。
このRavaldらの研究では、被験者のPlIは8年間でほぼ20%と良好であったにもかかわらず、約3/4の患者さんに根面齲蝕が発生しています。
このことは、患者さんがプラークコントロールに注意を払っていたとしても、根面齲蝕の完全な抑制は難しいことを示しています。
(参考文献)
Ravald N, Hamp SE, Birkhed D : Long-term evaluation of root surface caries in periodontally treated patients. J Clin Periodontol 13 (8) : 758-767,1986.
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インプラントの治療計画を立案する際、相対的に状態の良い歯牙を保存し、その前後にインプラントを埋入するケースは少なくありません。
しかしながら、インプラントとインプラントに挟まれた歯牙は、今回紹介した根面齲蝕、歯根破折、歯周病など様々な理由で保存不可能となり、抜歯に至ることもまた現実には珍しいことではありません。
患者さんが将来にわたり、追加のインプラント治療が必要にならないような治療計画を立案することを"是"とすると、インプラントとインプラントの間に挟まれた歯牙は、よほど条件が良くなければ抜歯した方が良いということになります。
その方の将来の未来予測をすることができる歯科医師は、一本でも歯を残したい患者さまから、自らが"是"とする治療計画に対する同意を得ることが困難な場合もあります。
私は、インプラント相談に来られる方が、可能な限り納得されるように、文献やあらゆる説明ツールを用意し、歯科医師と患者様が同じ目線で、それぞれの治療計画のメリット・デメリットを把握できるようにしたいと考えております。
両者が、十分に納得したうえで、治療計画を立案する必要性があるということになります。