コーヌスタイプのインプラント義歯
五十嵐はさまざまな設計の遊離端義歯において、床に加わる咬合力が支台歯と欠損部顎堤へどのような割合で配分されるかを口腔内で測定した結果、有床部で負担される咬合力の割合は、
ワイヤークラスプ 64%
エーカースクラスプ 39%
コーヌスコローネ 13%であったと報告している。
(参考文献)
五十嵐順正 : パーシャルデンチャーの利点を生かすための支台装置(維持装置). 歯科医療, 6 (1) : 35-46,1992.
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ワイヤークラスプとは、直径1ミリ程度のワイヤーを屈曲した入れ歯のバネ、エーカースクラスプとは、金属を鋳造し製作した入れ歯のバネ、ーヌスコローネとは、着脱可能なブリッジのような装置で、装置を安定させるためのバネはないものです。
今回のデータをもとに考えると、ワイヤークラスプを使用した義歯に比べ、エーカースクラスプを使用した義歯は、粘膜部での咬合圧負担量が大きいために、単純に咬んで痛みが発生しやすいといえます。
また個人的な臨床イメージですが、バネが緩みやすく、バネがかかっている歯が増加する傾向にあるのは、ワイヤークラスプではなかろうかということです。
そしてももう一つは、コーヌスクローネの粘膜部での咬合圧負担がわずか13%ということを考えると、『コーヌスクローネが設計可能な装置であるなら、そもそもブリッジが可能だ。ブリッジが適当ではないからといって、コーヌスクローネを選択するのは誤りである。』と主張する歯科医師が存在するのも、納得させられるデータです。
インプラントを支台にしたコーヌスクローネタイプの義歯を是とする歯科医師もいますが、この治療方針のメリットは、清掃性が良いことくらいではないかと考えています。
『何かあった場合に対処がしやすい』とも聞きますが、力学的に何かしらの問題があった場合には、治療予後は近い将来別な問題を抱えることが少なくないのではなかろうかと危惧しています。
またこのコーヌスクローネタイプのインプラント義歯は、製作費用が比較的高額であるために、都市部の富裕層向けの治療ともいえるかもしれません。