カンペル平面は仮想咬合平面として信頼性が低い?!

カンペル平面は左右側いずれかの鼻翼下縁と両側の耳珠上縁によって形成される平面と定義されます。
教科書的にはカンペル平面と咬合平面が平行であるとされていますが、両者は必ずしも平行ではないということも報告されており、後方基準点は耳珠中央・下縁、外耳道上・下縁など研究者によって異なっています。
そのため、カンペル平面を基準として設定された仮想咬合平面は、上顎前歯人工歯の垂直的排列位置に一応の目安を与え、咬合平面の左右的な高さのガイドとはなりますが、臼歯部人工歯の排列ガイドとは必ずしもならないことを意味しています。
したがって、カンペル平面と仮想咬合平面を完全に一致される必要はないと考えられます。
(参考文献)
細井紀雄,平井敏博,大川周治,市川哲雄. 無歯顎補綴治療学 第2版.2009 ;84-90,144.
Costen JB. A syndrome of ear and sinus symptoms dependent upon disturbed function of the temporomandibular joint. Ann. Otol. Rhinol. Laryngol. 1934 : 43-1-15.
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実は、患者さんの耳の高さが左右で異なることは少なくありません。
(鼻が曲がっている方も少なくないので、カンペル平面の基準点である鼻下点も左右で位置が異なる可能性もあります。)
そのため、カンペル平面が必ずしも仮想咬合平面として信頼できないということなのです。
頭蓋骨の一つのパーツである側頭骨には、うろこ状縫合があります。
この縫合は開いたり閉じたりすることにより、頭蓋骨の左右的・前後的な誤差を是正する働きがあります。
側頭骨の上には耳介が存在するので側頭骨の位置が左右で異なるのであれば、当然のことながら、耳珠の形態や位置も左右で異なるということになります。
ただ、かつては『カンペル平面は、仮想咬合平面である。』という考え方が一般的でした。
しかしながら、現在では『必ずしもそうではない。』と考え方の主流が変化してきています。
これは、『近年、身体が歪んだ人が増えてきている。』ということにも関連していることでしょう。
私たち歯科医師は、程度の差はあれ、頭蓋骨が歪んだ人を相手に、歯列矯正治療やインプラント治療を行っています。
歪みの程度が大きい患者さんであれば、歯列矯正+補綴治療、あるいは健康ではあるけれど現在の歯の方向や咬合面形態を是正するために、抜歯してインプラントという臨床ケースは十分にあり得ると考えています。

2015年2月 1日

hori (15:56)

カテゴリ:インプラントについて

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