インプラントには当然のことながら、根面齲蝕がない。
・介護施設などの訪問診療でのケアのしやすさでは、インプラントと天然歯を比較すると、インプラントの方がはるかにケアが楽です。
なぜなら、根面齲蝕に悩まされることがないからです。
高齢者の特徴の一つとして、唾液の減少が挙げられます。
唾液が少なくなって、全身疾患が出てくるようになると、なぜか根面齲蝕が増えてきて、天然歯がぽきぽき割れるといった現象がみられるようになります。
インプラントであれば、その心配がありません。
またインプラントはケアできなくなると、インプラント周囲炎を起こして抜けやすくなると言われてきましたが、実際は天然歯とインプラントで有意差はないのです。
インプラントだから、特別歯肉が腫れやすいわけではないのです。
(デンタルダイヤモンド 2015年9月号 )
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・『根面齲蝕にならない分だけインプラントの方がケアしやすい。』というのは納得できます。
天然歯の根面齲蝕、特にクラウン・ブリッジ(被せ)がない状態では比較的早期の発見が可能で、治療内容も軽めの処置となります。
しかしながら、被せがある歯では、被せの辺縁よりも下方、もっと言えば、歯肉上縁よりも下方に齲蝕が発生していることが多いので、治療が困難となる傾向があります。
イメージとしては、被せ物が持続的に受けていた咬合力がマイクロクラックを発生させ、それが経時的に大きなクラックへと変化していく。
クラックが発生する部位は、クラウン辺縁よりも下方。
齲窩(虫歯の穴)はないけれど、触ると何となく柔らかい感触があり、経過観察していると、ある時、崩れるように根面齲蝕になっているという印象があります。
しかも、歯周の状態が悪ければ、その根面齲蝕は確実に歯肉上端よりも下方で発生しているのです。
こうなると、ウエットな状態なので、CR充填(プラスティックを詰める治療)も困難。
痛みがないことも多いけれど、根の治療が必要なケースも少なくなく、実際、被せを除去し、齲蝕を除去すると意外と健全歯質は少ないことも多い。
治療を開始したばかりに、歯の寿命を逆に短くしてしまう可能性もあるのが、この根面齲蝕の治療です。
その根面齲蝕がないというのは、ある意味、高齢者にとってのインプラントはメリットといえるかと思います。