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65歳以上の自立高齢者でも、16.4%が口腔機能低下症。

地域歯科診療所受診者(平均年齢51±16歳)の49.2%が口腔機能低下症と診断され、高齢期以前から口腔機能が複合的に低下していることも報告されている。
また、福岡県歯科診療所通院中の65歳以上の自立高齢者でも、16.4%が口腔機能低下症に該当し、残存歯数が19歯以下では該当者の割合が有意に高くなり、口腔機能低下症の該当の有無に関して残存歯数が有意に関連していたと報告されている。
この報告では、認知症や低栄養が認められない自立高齢者では、口腔機能低下症は加齢よりも残存歯数が関連要因となる可能性が示唆されている。
(参考文献)
伊輿田清美, 他.:地域歯科診療所における自立高齢者の口腔機能低下症に関する実態調査. 老年歯学, 34(3):406-414.2019.
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口腔機能低下症の該当の有無に関して残存歯数が有意に関連していることが明らかになりました。

2024年11月 5日

hori (08:06)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

オーラルフレイルが身体的衰弱に影響を及ぼしている可能性

日本人高齢者の身体的衰弱(サルコペニア)を予測する指標としてオーラルフレイルを用いることが可能であることを調査した報告がある。
その報告によると、オーラルフレイル非該当者と比較し、オーラルフレイル者は23年間の身体的フレイルおよびサルコペニアの発生リスクが2.4倍および2.1倍にそれぞれ増加し、45か月間の要介護状態および死亡リスクも2.4倍および2.1倍にそれぞれ増加していたとしている。
これらの結果から、高齢者ではオーラルフレイルが身体的衰弱に影響を及ぼしている可能性が示唆され、オーラルフレイル対策の重要性が示された。
「口腔機能低下症」は、加齢だけでなく、疾患や障害など様々な要因によって口腔機能が複合的に低下した疾患と定義され、放置することにより咀嚼機能不全、摂食嚥下障害などを引き起こし、さらに進展すると全身的な健康を損なう。
高齢者では、う蝕や歯周病、義歯不適合などの口腔の要因に加え、加齢や全身疾患も要因となり、口腔の機能が低下しやすく、また低栄養や廃用、薬物の副作用などにより修飾されて複雑な病態を呈することが多い。
そのため、個々の高齢者の生活環境や全身状態、またその変化を見据えて口腔機能を適切に管理する必要がある。
(参考文献)
日本老年歯科医学学術委員会:高齢期における口腔機能低下?学会見解論文2016年度版?老年歯学, 31(2):81?99.2016.
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オーラルフレイル者は23年間の身体的フレイルおよびサルコペニアの発生リスクが2.4倍および2.1倍にそれぞれ増加し、45か月間の要介護状態および死亡リスクも2.4倍および2.1倍にそれぞれ増加していたということが明らかになりました。
口腔も全身の一部なので、う蝕や歯周病で口腔機能が複合的に低下することから始まり、咀嚼機能不全、摂食嚥下障害などを引き起こし、さらに進展すると全身的な健康を損なうという流れがあることは理解しやすい内容ですね。
仮にご自分の歯や義歯等でうまく咀嚼・嚥下ができない状態でもインプラント治療で機能を回復することができます。

2024年11月 1日

hori (08:18)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

逆根管治療の術後の痛み予測は可能なのか?

逆根管治療後の術後疼痛の経過と、疼痛の予測因子に関する研究。

逆根管治療が行われた18-75歳の健康状態に問題のない173名について検討した。

術後5日間の疼痛を4台会で記録した。

痛みのレベルは、

0:痛みなし

1:軽度の痛み(鎮痛剤の服用を必要としない不快感)

2:中等度の痛み(鎮痛剤の服用でコントロールできる痛み)

3:強い痛み(鎮痛剤の服用で緩和されない痛み)とした。

平均疼痛レベルは1日目が最高で、その後徐々に減少した。

術後1日目で強い痛みはであった。

患者のほとんどは1日目、2日目に軽度あるいは中等度の痛み、3-5日目に痛みを最も多く記録していた。

5日目には86.5%の患者が痛みなし、または軽度の痛みであった。

強い痛みの予測因子を固定するため統計解析を行うと、性別、年齢、術前の骨の厚さに有意差を認めた。(P<0.05)。

術後の強い痛みの起こるオッズ比は女性患者が男性患者と比較して2.8倍増加、年齢が1歳上がると1.04倍現象、術前の骨の厚みが1ミリ増加するごとに1.4倍増加した。

(参考文献)

Malagise CJ, et al. Severe pain after endodontic surgery: an analysis of incidence and risk factors. J Endod 2021; 47 (3): 409-414.

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逆根管治療術後の強い痛みの起こるオッズ比は女性患者が男性患者と比較して2.8倍増加、年齢が1歳上がると1.04倍現象、術前の骨の厚みが1ミリ増加するごとに1.4倍増加することが明らかになりました。

2024年10月20日

hori (08:29)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

大きな根尖病変に対する根管治療後の予後予測因子

大きな根尖病変に対する根管治療後の予後予測因子 CBCTを用いた後ろ向き研究
(研究目的)
大きな根尖病変を有する歯の根管治療後、完全に治癒するまでの期間及び影響を与える因子をCBCTによる経過観察で評価すること。
(研究内容)
最大径10-15ミリの根尖病変を有する79歯に対して、歯内療法専門医が根管治療を行った。
その後6か月おきに口内法デンタルエックス線撮影、12か月おきにCBCT撮影を行い、48か月の経過観察を行い、根管治療のみで根尖部透過像が完全に治癒するまでの期間を評価した。
治療前の透過像の体積、年齢、性別、治療の種類(初回根管治療か再根管治療)、および根管充填材の種類が病変の治癒期間に与える影響を解析した。
(研究結果)
治癒しなかった19歯中14歯には外科的歯内療法、5歯では抜歯が行われた。
治癒期間を有意に延長させる因子として、患者の年齢および術前の透過像の体積が特定された(p<0.001)。
性別、根管充填材、治療の種類は治癒に影響を与えなかった(P>0.05)。
(結論)
大きな根尖病変を有する歯の根管治療においては、患者の年齢、病変の大きさが治癒期間に影響を与えることが示唆された。
CBCTを用いた経過観察は、根尖病変の状態を詳細に評価することができ、経過観察期間における治療方針決定の一助となることが示された。
(参考文献 Mosquera-Barreiro C, Ruiz-Pinon M, Sans FA, Nagendrababu V, Vinothkumar TS, Martin-Gonzalez J, Martin-Biedma B, Castelo-Baz P. Predictors of periapical bone healing associated with teeth having large periapical lesions following nonsurgical root canal treatment or retreatment: A cone beam computed tomography-based retrospective study. Int Endod J, 57(1) : 23-36,2024.)
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大きな根尖病変を有する歯牙に対する根管治療の効果をCBCTで予後予測が有効であることは、頭で考えただけでも当然と考えられます。
しかしながら、今回の論文では具体的な数字が示されたことにその価値があると考えられます。
すなわち、完全治癒の割合が76%、不完全治癒が24%。
その不完全治癒のうち、74%に対して、追加で外科的歯内療法を行い、26%に対して抜歯を行ったという結果でした。
また、根尖病変の大きさが小さいほうが、そして年齢が若い方が治癒期間は短縮する方向に向かいやすく、完全治癒の平均期間は完全な治癒は76%(60/79歯)で認められ、その平均期間は19か月という結果でした。

2024年10月15日

hori (08:49)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

やはり初回治療症例は、成功率が高い。

Sjogrenらは1977-1979年に行った635歯の849根管を対象に、8-10年後の状態を分析して、治療結果に影響を及ぼした項目を検討した。
まず、術前に歯根周囲のX線透過像がない症例の成功率は96%を超えていたが、歯根周囲の X線透過像がある症例では86%しか治癒を認めなかった。
次に根管充填の位置については、歯髄壊死や根尖透過像を有しているが、初回治療の場合、X線的根尖から2ミリ以内の成功率は94%で、オーバー(50%)と2ミリ以上アンダー(65%)の3者間に有意差は認められなかった。
(参考文献 Sjogren U, et al. Factors affecting the long-term results of endodontic treatment. J Endod. 1990;16(10) 498-504.)
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やはり術前に歯根周囲のX線透過像がない症例と歯髄壊死や根尖透過像を有していても初回治療症例は、成功率が高いということを再認識しました。

2024年10月 5日

hori (09:08)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

オーバー根充VSアンダー根充

Schwartzらは、1959-1979年に歯内治療を行った1007歯の1770根管を対象とし、6か月-10年後の状態を調べ分析している。
X線写真で、オーバー、アンダー・フラッシュの3つに分類し評価した結果、オーバー根充はアンダー根充よりもおよそ4倍失敗率(36.59%と8.10%)が高かったと報告した。
また、フラッシュ根充も解剖学的にみれば大多数がオーバー根充となりえるということは臨床状留意するべきである。
(参考文献 Swartz DB, et.al. Twenty years of endodontic success and failure. J Endod. 1983; 9(5) : 198-202.)
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確かにフラッシュ根充は大多数がオーバー根充かもしれません。
歯牙への咬合力が大きい場合、根尖にセメント質が添加されるわけですから、適切な歯根長はX線上ではより短めになる可能性もあるのではないかと考えています。

2024年10月 1日

hori (08:15)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

都道府県別子ども割合

子どもの割合は沖縄県が最も高く、秋田県が最も低い。
都道府県別子ども割合(2023年10月1日現在)によると、全国平均は11.4%。
沖縄県が16.1%で最も高く、秋田県が9.1%で最も低いことが明らかになりました。
また地域別では九州・沖縄地方で子ども割合は高く、北海道・東北地方で子ども割合は低いことも明らかになりました。
(日本歯科評論 2024年8月号 )
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九州や沖縄が子ども割合は高いというデータです。
外国人はどれほど含まれているのかのデータの記載はありませんが、興味深いデータであると感じました。

2024年9月20日

hori (09:17)

カテゴリ:インプラントと若返り

レスベラトールが酸蝕症予防。

レスベラトールは、ブドウなどに含まれるポリフェノールの一種で抗酸化や抗炎症、抗がん、高糖化などの有益な効果が知られており、う蝕研究においては、レスベラトールによる細菌やバイオフィルムへの抗菌効果が報告されている。

そこで、本稿では、レスベラトールの酸蝕症に対する効果を検証した論文を紹介する。

研究方法としてウシエナメル質標本を作製し、ヒト唾液中に浸漬させ獲得ペリクルを形成させた。

続いて標本をPBS(ネガティヴコントロール)、Elmex(ポジティヴコントロール)、4つの異なる濃度のレスベラトール(1, 10, 100, 400μg/mL)の6つのグループに分けて処理後、再度唾液中に浸漬させた。

最後に標本を1%クエン酸に浸漬させた。

これらの実験手順は3回繰り返され、各標本の表面微小硬度実験開始と終了後で測定し、表面微小硬度変化率(%SML)で評価した。

その結果、ネガティヴコントロールと比較して、レスベラトール(1, 10, 100μg/mL)で処理したものは、エナメル質表面の微小硬度の低下を防ぎ、エナメル質を有意に保護した。

これらのことから、レスベラトールは酸蝕症を予防する有望な化合物であり、酸蝕症予防のための歯科用製品の新たな方向性を示す可能性が示唆された。

(参考文献)

Reis FN, Pela VT, Camera VJF, Venture TMO, Rodrigues CMVBF, Buzalaf MAR: A new role for resveratrol : Protection of enameru against erosion. Journal of Dentistry, 141 : 104810,2024.

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レスベラトールは酸蝕症を予防する有望な化合物であることが明らかになりました。

2024年9月15日

hori (08:04)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

歯数少ない高齢者外食頻度にも影響

2019年に実施された国民生活基礎調査と国民健康・栄養調査を統合したデータの2164人が対象で、そのうち女性は52.4%、平均年齢は74歳(標準偏差6.8)。
歯の本数が「20本以上」「10-19本」「1-9本」「0本」の群に分け、外食頻度を「週1回以上」「週1回未満」に分類したうえで、年齢、性別、喫煙状況、飲酒習慣、教育歴、同居の有無など、外食行動に与える影響を除外した。
解析の結果、「週1回以上」外食をしている人は456人(21.1%)だった。
歯の本数別に「週1回以上」外食している人の割合を比較すると、「20本以上」の群に対して「10-19本」は0.89倍、「1-9本」が0.67倍、「0本」が0.53倍と少なくなることが分かった。
(参考文献 Nutrients 7月12日付)
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興味深い研究結果ですね。
歯数と外食頻度が関連があり、歯数が少ないと高齢者の外食頻度が減少傾向に向かうことが明らかになりました。
歯を喪失した部位をインプラント治療で回復させた場合、肉体的QOLはもちろんのこと、精神的QOLも併せて向上する可能性があります。

2024年9月 5日

hori (08:40)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

「うま味」の感受性に影響与える要素

岡山大学歯学部の学生87人(男性43人、女性44人、平均年齢21.7歳)の協力を得て、安静時の唾液分泌量、唾液緩衝能力、5基本味(甘み、うま味、塩見、酸味、苦み)に対する認知閾値を測定し、関連性について検討した。
結果、唾液緩衝能が高い人ほど、うま味の感受性が高いという相関関係があることが分かった。
その一方で、酸味を含む他の味には同様の相関関係が見られなかったことから、唾液緩衝能力はうま味の感受性に影響する可能性が示唆された。
(参考文献 Archives of Oral Biology 5月29日付)
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唾液緩衝能力が高い人は虫歯になりにくいだけではなく、高血圧や糖尿病に対するリスクも低下する可能性が推察されます。

2024年9月 1日

hori (08:53)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

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