入れ歯の悩みの最近のブログ記事

部分入れ歯の鉤歯の喪失リスクはブリッジの約3倍。

Aqulinoらは部分入れ歯鉤歯とブリッジ支台歯の生存率の比較を行い、ブリッジ支台歯の生存率は10年で92%、部分入れ歯の鉤歯は56%と、ブリッジの方が生存率は高いと報告しており、約Cabanillaらも部分入れ歯の鉤歯の喪失リスクはブリッジの約3倍と報告している。その理由として、佐藤らは、部分入れ歯の鉤歯は、クラスプやバーを介して欠損部にかかる咬合力を一部負担することによる力学的な要因や、クラスプやバーにより鉤歯の歯周組織状態が悪化するという衛生学的な要因によって生存率が低下するとしている。
(参考文献)
Cabanilla l. L., Neely A. L., Hernandez F. : The relationship between periodontal diagnosis and prognosis and the survival of prosthodontic abutments: a retrospective study. Quintessence Int. 40: 821-831, 2009.
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部分入れ歯は残存歯が減りやすいタイプの装置かもしれない。

2024年3月 1日

hori (08:26)

カテゴリ:入れ歯の悩み

近遠心レストと遠心レスト

・76欠損で5にクラスプがかかる設計での部分床義歯の義歯床下粘膜へ加わる荷重は、近遠心レストと遠心レストを比較した場合にはあまり差が認められないことが示された。

(歯界展望 2020年9月号 )

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遠心レストよりも近遠心レストの方が歯牙負担が増大し、その結果義歯床下粘膜への荷重は減るものと考えていましたが、実験ではそうではないことが明らかになりました。

当たり前と考えていることも、本当だろうか?と疑問を持つ視点を持つことは大切なことだと感じました。

2020年10月10日

hori (08:16)

カテゴリ:入れ歯の悩み

補綴装置として義歯を選択すると、残存歯喪失のリスクが3.65倍高い。

・補綴装置として部分床義歯を選択すると、その他の固定性補綴オプションの選択と比較して、残存歯喪失のリスクが3.65倍高い。
これは補綴治療の長期治療予後を分析した、ある後ろ向き研究の結果である。
これらの報告の中には、他の補綴オプションの選択が困難な口腔内状況の患者も含まれていると考えられ、RPDの適応症の広さゆえの結果ととらえることもできるだろう。
(参考文献)
Muller S, Eickholz P, Reitmeir P, et al. : Long-term tooth loss in periodontally compromised but treated patients according to the type of prosthodontic treatment. A retrospective study. J Oral Rehabil, 40: 358-367,2013.
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部分床義歯でばねがかかる歯には、元々その歯が受ける力以外に、義歯使用時に揺する力がどうしてもかかります。
そのため、義歯部分にインプラント補綴がある場合と比較して、残存歯喪失リスクが高くなるものと推測されます。
義歯にしても、ブリッジしても残存歯の犠牲のもとに成り立っている治療といえます。

2020年5月20日

hori (08:27)

カテゴリ:入れ歯の悩み

主機能部位という側面でも義歯よりインプラントに軍配が!

・我々は、同等の臼歯部咬合支持の喪失を示す患者に対して、局部床義歯かインプラントで補綴処置した場合の主機能部位について分析を行った。
その結果、インプラントにおいては、92.3%の患者で主機能部位が大臼歯部に存在し、ほぼ天然歯の場合と同等の結果であったが、局部床義歯において70.8%にとどまった。
このように補綴装置の違いによって主機能部位が異なることが判明し、補綴装置のレジリティが関与している可能性が示唆された。
(参考文献)
山下秀一郎:21世紀の戦略的補綴 パーシャルデンチャーを科学する. The Quintessennce,24 (4) : 79-88,2005.
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保険診療ではアンテの法則に則ってブリッジの設計が決定されています。
また一般に歯科では、ブリッジが可能であればブリッジによる治療を行いますが、不可能であれば義歯による治療を行います。
具体的な例を挙げれば、大臼歯部では2本喪失しただけで、義歯使用を余儀なくなれている患者さんがいる一方で、前歯部では4本喪失してもいまだブリッジの治療を受けることが可能です。
そのような意味では、義歯を使用している患者さんは、前歯部より大臼歯部を喪失したことによって、義歯を使用している方が多いものと推測されます。
一方、今回の報告により、インプラントにおいては、92.3%の患者で主機能部位が大臼歯部に存在し、ほぼ天然歯の場合と同等の結果であったが、局部床義歯において70.8%にとどまったという結果が得られました。
これを受けて、大臼歯部の欠損に対して、義歯を使用している患者さんが多いという前提で考えるのであれば、仮に大臼歯部を義歯で咬合させる状態を歯科医師が提供したとしても、患者さんはそれよりも前方の天然歯部分で咬合しているケースがある一定数存在するといえるということになります。
すなわち、義歯は使用していても、咬んでいる部分は自分の歯の部分であるということになります。
また義歯を入れていても、入れていなくても、咬む部分は結局自分の歯であるならば、義歯自体使用することをやめてしまう患者さんもいるかもしれません。
そして今回のデータは、大学病院の歯科医師が理想的な義歯を製作した結果をベースにした報告と考えられるので、一般の義歯患者さんのデータはインプラントの92.3%という数字はもちろん、70.8%という今回の局部床義歯の数字からも大きく低下した数字であることが予想されます。
この数字の差が義歯よりもインプラント方が良く噛めることと関連しているように考察されます。

2019年9月25日

hori (08:10)

カテゴリ:入れ歯の悩み

インプラントを義歯の直接支台として使う場合

・天然歯に側方力が加わると、回転中心は歯根の根尖側1/3となるのに対して、インプラントではプラットフォーム周囲の骨が回転中心となる。
そのため、インプラントでは天然歯よりも大きな力が頸部インプラントに周囲骨に加わる。
Eomらは有限要素法による検討を行っており、3歯の上顎遊離端欠損の直接支台がインプラントの場合では、天然歯である場合に比べて皮質骨に約10倍の応力が加わっていることを報告している。
(参考文献)
Eom JW, et al. Three-dimentional finite element analysis of implant-assisted removable partial dentures. J Prosthet Dent. 2017; 117(6): 543-742.
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過大な咬合力で歯を喪失した患者さんには、インプラントを3歯の遊離端欠損の直接支台として使用するのはリスクがあるということになります。
また粘膜の厚みや歯槽骨の質の違いからも下顎よりも上顎の方がリスクが高い可能性が窺えます。

2018年9月15日

hori (08:59)

カテゴリ:入れ歯の悩み

義歯が痛くて使えていない方は、外側翼突筋は萎縮しているかもしれない。

・外側翼突筋は義歯を装着している場合、垂直的な咬合を行うことが多く、顎を左右に引き出すなどの複雑な動作に慣れていない。
上下に固定性の即時荷重インプラントの上部構造が装着されている場合、硬い食物を摂取するとき、顎は左右に動作することが多くなる。
このとき、顎関節だけでなく、頬骨周辺にも関連痛が広がることがある。
顎二腹筋は喉の部分、下顎の切歯部分などの痛みが出ることがある。
咬筋、側頭筋の筋力の筋力がつくと痛みは軽減することが多い。
ファイナルレストレーション装着後の口腔周囲筋ケア vol.2 )
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『入れ歯が痛くてつらい。』という主訴で、インプラント治療を希望される方の咀嚼様式は、チョッピングタイプ(垂直咬合)からグラインドタイプ(左右に広がる複雑な咬合)に変化するものと考えられます。
咬めない状態が長期間続くと、咀嚼筋や表情筋が萎縮するので、急にインプラントで咬めるようになると、筋肉痛のような痛みを生じる場合があります。
当然のことながら、筋肉が正常に発達するようになれば、そのような痛みは消失することが多いわけです。

2016年5月30日

hori (16:07)

カテゴリ:入れ歯の悩み

インプラントで誤嚥性肺炎を減らせるか。

・また誤嚥性肺炎も重要です。
75歳以上の老人ホームで、直接死因の1位になっています。
85歳以上となると、一般の人をすべて入れても誤嚥性肺炎が1位です。
8020運動を達成された方は誤嚥することが非常に少ないのです。
というのも舌骨を固定して前上方に持ち上げるには、咬むことが必要なのです。
つまり、咬める歯がないと非常に飲み込みづらい。
総入れ歯を装着している人と、同じく歯がなくて総入れ歯を入れていない人の比較では、総入れ歯を入れているだけでも、3倍誤嚥性肺炎を防げるということが分かっています。
固定式のインプラントであれば、もっと有効になるであろうと思われます。
そういう具体的な健康面以外にも、口元に自信を持つと、女性だと化粧まで変わるくらい、皆さん自信を持つわけです。
つまり、現在、歯がない者にとっては、"咬める"、"健康"、"美容"の3つが兼ね備えられる方法では、インプラントが一番の近道ではないかと思います。
義歯でも確かに咬むことはできるようになりますが、口輪筋の閉鎖がないと、総義歯は維持できないので、普通のスマイルラインは獲得できません。
つまり総義歯では、ストレスなく笑うことができないのです。
ストレスを感じずに笑うだけで、脳の中から、いわゆる快楽物質というのが出ますよね。
あれがいわゆるがん予防などになると言われていますが、動かない、取れないインプラントによってストレスなく笑えることは、健康にもつながるのです。
Quint DENTAL AD chronicle 2016 より)
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総入れ歯を装着している人と、同じく歯がなくて総入れ歯を入れていない人の比較では、総入れ歯を入れているだけでも、3倍誤嚥性肺炎を防げることからも、全く歯がない人がインプラント義歯を装着するようになると、総義歯以上に誤嚥性肺炎は減少するかもしれません。
また、総義歯をうまく使いこなせる人の特徴は、どちらかというと無表情な方が多いように感じます。
これはすなわち、口輪筋の閉鎖が十分にあり、義歯内面に空気を入れないような口腔環境を自然と体得できている方ともいえます。
よくあるケースが、上顎の義歯安定剤を使用されている方には、以下に述べるような特徴があるように感じています。
・下顎前歯が残存している。
・臼歯部の歯肉が薄い。
・咬合力が強い。
・笑顔がステキ。(普通のスマイルラインが獲得されている。)
このようなタイプの方は、インプラント治療をされると満足度が高いと思います。

2016年4月25日

hori (16:20)

カテゴリ:入れ歯の悩み

ピタッと合うのはレジン床?金属床?

部分入れ歯を作るときに、患者さんがまず迷うのが「保険の部分入れ歯にするか」「それとも自費にするか」だと思います。

(中略)

金属床の場合、クラスプから連結部、床までを、同一素材で1ピースのメタルフレームとして一体成型することができます。

あとからクラスプを付けたり右側と左側の入れ歯を連結させたりする必要がなく、設計通りの精巧な入れ歯が出来上がりやすいのです。

レジン床の場合は、クラスプはクラスプ、連結部歯連結部で別々に作って起き、それを後で組み立てるので、微妙な誤差が出がちです。

出来上がってすぐにはピタッとこないことが普通で調整を重ねながら仕上げていくことになります。

(どんなのがある? どう選ぶ? 部分入れ歯を知りたい! より)

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この本にも記載されているように、自由診療の金属床の方がクラスプから連結部、床までを同一素材で1ピースでメタルフレームとして一体成型できるので、保険診療のレジン床よりも精巧な入れ歯が出来上がりやすいといえます。

保険診療のレジン床(プラスティック製)は、かなりの誤差があるものと技工士さんも認識しているので、比較的緩めの設計にしているケースが多いように感じます。

レジン床は、様々なパーツがそれぞれ緩めであるがゆえに、また咬んだ時に金属床よりたわむ量が多いがゆえに、バネをかけた歯を揺さぶる結果となります。

すなわち、入れ歯を使用する時点で、歯を失うリスクが高まり、それと同時に使用する入れ歯の大きさが徐々に大きくなるということになります。

こうして考えると、自由診療の金属床は保険のレジン床よりはいいけれど、やはりバネをかけた歯をいずれ失う可能性が高いということになります。

そのような意味でも、インプラントの方が金属床よりも優先順位が高い場合は多いわけです。

2015年8月10日

hori (08:53)

カテゴリ:入れ歯の悩み

「フレキシブルデンチャー」は、あまり推奨される症例はない。

・いわゆる「フレキシブルデンチャー」は、以下のような特別な場合を除いては、原則推奨されない。
1.暫間義歯
適応は中間欠損が原則である。
遊離端欠損では、直接支台装置と顎堤が過重負担になるため、頻回のメンテナンスが必要である。
2.金属アレルギー
3.前歯部の少数歯欠損
あくまでも直接的な咬合力がかかりにくく、義歯床の沈下が少ないことが予想される場合であり、欠損部の人工歯でガイドされないことが大切である。
4.義歯に機能力の負担がかからない症例
咬合支持が確保されている少数歯欠損症例で、義歯に機能力負担がかからないと想定される場合は、金属を使用しないノンメタルクラスプデンチャーも可能な場合がある。
5.審美性を優先せざるを得ない症例
6.歯の切削(前処置)に同意が得られない症例
(ノンメタルクラスプデンチャー )
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現在多くのフレキシブルデンチャーを患者さんが使用されていることと思いますが、この本にもあるように、推奨される症例はそれほど多くはないということが分かります。
(そもそも十分ブリッジができる状態がフレキシブルデンチャーの適応症といっても過言ではないかもしれませんが、そのような欠損形態でフレキシブルデンチャーを希望された方は、少なくても当院ではそれほど多くはありません。)
インプラントよりは費用的に安価であること、手術を希望されない場合があることなどの理由により、患者さんはフレキシブルデンチャーを選ばれるのでしょう。
けれども、フレキシブルデンチャーは咀嚼の度にどうしてもたわむので、残っている歯を揺さぶり、歯の寿命を短くする結果となるのです。
そうなると、適切に金属を使用してたわみの少ない義歯の設計を考えていく必要があります。
しかしながら、そのような設計をすると、治療費が高額となるので、金属床ベースのノンクラスプデンチャーは歯科医師にも患者さんにもあまり選ばれなくなっている現実があるように感じます。
個人的には、インプラント>金属床ベースのノンクラスプデンチャー>保険診療>フレキシブルデンチャーという順位でしょうか。

2015年7月25日

hori (11:19)

カテゴリ:入れ歯の悩み

60%もの義歯が装着後5年で使用されなくなる。

1970年代前後に、東京医科歯科大学歯学部部分床義歯補綴学分野で、5年間、2000症例程度のクラスプ義歯装着患者への大規模な経過観察・予後調査が行われた。

この調査から、『60%もの義歯が装着後5年で使用されなくなる』ことが明らかになった。
これを解析すると、使用中止に至る原因として以下の3大要因があることが示された。
1.義歯部(有床部・支台装置)の不適合 (24.4%)
2.齲蝕・歯周病による支台歯の喪失 (22.5%)
3.義歯の破損 (29.3%)
・義歯不使用の3大要因を招いていた主な原因
原因1:義歯設計の概念として、当時は「緩圧性」の義歯の動揺を許容する設計の在り方が"良し"とされていた。
原因2:プラークコントロールという概念が歯科補綴領域で希薄であった。
原因3:使用材料とその複合化(金属構造とレジン構造の最適使用)が十分でなかった。
・パーシャルデンチャー治療における設計の3原則
原則1:「義歯の動揺」の最小化→動かない
原則2:予防歯科学的な配慮→汚さない
原則3:破損への対応→壊れない
(パーシャルデンチャー成功のための設計3原則 より)
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1970年代のデータとはいえ、『60%もの義歯が装着後5年で使用されなくなる。』というのは、歯科医師としてはショッキングな内容です。
保険診療で多用されるものに、レジン床義歯、クラスプがあります。
レジン床義歯は咬合力が伝わった際にたわむので、歯牙を揺さぶりやすく、それゆえ寿命を短くします。
また、クラスプ(レジン床義歯を動かないように止める金属の金具)、特に二腕鉤タイプのものは、歯牙を欠損方向に倒す力がかかるので、設計を良く考えないと、同じく歯牙寿命を短くします。
歯牙に対して優しい設計にするには、全体がたわみが少なく、歯牙が傾斜する力がかからない維持装置が必要となります。
また、さらに追加するなら、異物感が少なく、清掃性の優れた義歯設計が重要であることは言うまでもありません。
こうして考えると、歯牙に優しい義歯はレジン床義歯ではなく、金属床義歯の方が良いようにも思いますが、この本の中に次のような記載があり、同じく個人的には愕然としました。
(義歯の不使用率に関してはレジン床義歯と金属床義歯の差異も示され、約10%程度金属床義歯の方が良い成績であった。)
自由診療である金属床義歯でも、たった10%しか義歯の使用率が上がらないことが分かったからです。
メンテナンスが定着した現代ではもう少し数字が改善されるとは思いますが、"使用率"(10年間で95%前後)という側面で考えても、義歯よりインプラントに軍配が上がると言えそうです。

2015年5月10日

hori (17:27)

カテゴリ:入れ歯の悩み

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