いわゆる"薬で治す歯周病治療"は免疫に悪影響。
・内服した抗菌薬が必ず通過する腸内には、半数以上がバクテロイデス属である。
これはレッドコンプレックスで注目されているP.g菌やTannerella forsythia(T.f菌)の親戚にあたるグラム陰性嫌気性桿菌である。
・歯周病菌に良く効く抗菌薬ほど、腸内細菌に負荷をかけることになる。
逆に言うと、お腹に優しいと表現される抗菌薬ほど歯周病菌には効きにくいということになる。
・そもそもSRPで有効に歯周病菌が減らないと、歯周抗菌療法はうまくいかないのである。
別な言い方をすると、SRPがうまくがうまくいかないからといって、歯周抗菌療法に移行しても効果はあまり期待できないのである。
・同じポケットに2本のペーパーポイントを突っ込み、それを別々のラボにおくって検査をしてもらうと、一致率はなんと50%程度である。
検査結果が本当にポケット内の状況を反映しているのかと疑ってしまう数値である。
(歯界展望 2015年8月号 )
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いわゆる"薬で治す歯周病治療"について、その是非は個人的には疑問に感じていました。
今回の記事で、歯周病菌によく効く抗菌薬を服用すると、腸内細菌に悪影響があることが分かりました。
一方、私は藤田鉱一郎先生の本を好んで読むのですが、その中に繰り返し、『体の免疫は腸内細菌の状態で80%決定される。』というセンテンスが登場します。
歯周病の状態は抗菌薬で一時的には改善するかもしれませんが、体全体で考えるとマイナスの影響が大きいということになります。
また、1.SRPで歯周病が改善するなら、そもそも抗菌薬は必要ない。
2.SRPで歯周病が改善しないからといった歯周抗菌療法に移行しても効果は期待できない。
そうであるならば、どちらにしても、歯周病治療に抗菌薬が必要なケースはそれほど多くはない、ということになります。
さらに、薬で治す歯周病治療を是と考えている歯科医師が治療の効果の指標としている"細菌検査"も信頼性が低いということになるなら、いわゆる"薬で治す歯周病治療"は当院で行うことはないでしょう。